改正個人情報保護法の狙い ビッグデータを活用する新たな産業の創出
以下は、後藤紀一弁護士から教わったことである。
会社分割と法規制の変遷
1 会社分割
⑴旧商法時代は、会社分割は、「会社ハ其ノ一方ノ営業ノ全部又ハ一部ヲ他方ニ承継セシムル・・・」方法として認められていたが、分割会社に対する債権者に対して、「分割会社の債務の履行の見込みがあること」が要件とされていたため、債権者の権利は守られていた。
しかし、
⑵平成17年制定の会社法では、会社分割は、会社がその事業に関して有する権利、義務の全部または一部を承継会社等(吸収分割承継会社および新設分割設立会社)に承継させることを目的とする行為であると定義されるに至ったため、分割会社は、めぼしい財産のすべてと、今後取引をする予定の債権者に対する債務のみを、承継会社等(分割承継会社又は新設分割設立会社)に移転することができるようになった。
このような承継会社等が引き継ぐ債務の債権者のことは「承継債権者」といわれるが、そうでない債権者(「残存債権者」といわれる)は、会社の財産が空っぽになったままで放置されるリスクを負うことになるが、会社法は、その手当をしなかった。
要は、債務超過会社は、財産の全部とそれに見合う一部の債権者に対する債務のみを、承継会社等に移転させるjことで、承継債権者のみを保護し、残存債権者を切り捨てることが、会社法上できることになったのである。
え!と驚くことが、起こったのである。
(なお、以下は、後藤紀一弁護士の文である。)
しかし、このような結論はだれが見ても、不公正であるところから、これまで判例・学説では、①法人格否認の法理、②民法の詐害行為取消権(最判平24・10・12)、③破産法上の否認権、④事業譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任を定めた会社法22条1項の類推適用の判例(最判平20・6・10。昨日のコラムで紹介済み)等を使って、救済を図ってきたが、会社法上では全く残存債権者は救済されないというのは、会社法の致命的欠陥といわざるをえない。
⑶平成26年会社法改正による濫用的会社分割に対する救済
濫用的会社分割は、会社法の欠陥をついた詐欺的要素のある行為であることから、さすがにこれを放置することができなくなり、平成26年の会社法改正によって、概略以下のように改正された。
すなわち、会社法は、詐害的会社分割における残存債権者保護のために、①吸収分割において、分割会社が残存債権者を害することを知って吸収分割をしたときは、残存債権者は、直接、吸収分割承継株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。もっとも、吸収分割承継株式会社が残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、残存債権者は、この履行請求権を行使できない。
また、②新設分割において、分割会社が残存債権者を害することを知って新設分割をしたときは、新設分割設立会社に対して、残存債権者は、当然に履行請求することができるとした。
なお、会社分割は、組織再編行為(組織的行為)であるに対して、事業譲渡は、契約による行為であって、両者は法的に異なるが、実質的に同様に効果をもたらすものであるから、事業譲渡の場合も濫用的事業譲渡とのケースが予測される。そこで、改正会社法は,この場合も濫用的会社分割と同様に、残存債権者に直接の履行請求を認めた。
これによって、残存債権者は、時間と費用のかかるこれまでの救済方法によることなく、直接に承継会社等に対して、「承継した財産の価額の限度」ではあるが履行請求をすることができるようになった。ここにいう「承継した財産の価額」とは、承継した正味の財産の価格をいい、一緒に承継した債務を控除しないという意味である。
今回の会社法改正によって、残存債権者の保護は一歩進んだが、根本的解決方法は、旧商法時代のように、会社分割の要件として、「分割会社の債務の履行の見込みがある」という縛りをかけるとか、会社分割の対象財産等に「営業概念」の縛りをかけるべきである。今回の会社法改正においても、この点を検討したようであるが、会社分割の利用可能性を狭め、会社分割の自由度を一律に制限することになることを理由に、採用されなかったという(小出篤「濫用的会社分割・事業譲渡における会社法上の債権者保護」金融法務事情2071号31頁)。今回の改正によって,残存債権者が十分保護されるかどうか、今後とも注視する必要があるが,別項(筆者注:明日のコラムで紹介予定)で検討するように,直接の履行請求制度だけでは、はなはだ心許ない。