継続的契約の一方的な解約は許されるか?
東京地裁平成28年10月11日判決を紹介します。
この判決は、学校の教師が、職場で、当該教師に関わる、時間割表,生徒出席簿,生徒指導要録,成績通知票,生徒及び保護者に対する書面による通知,業務用ソフト(■)への登録氏名,タイムカード,年次有給休暇届並びに出張願(届)において,婚姻後の氏名が記載されていることを、不服として、使用者に対し、旧姓を使用することと、慰謝料の支払を請求した事件の判決ですが、
同判決は、「通称として婚姻前の氏を使用する利益は一般的には法律上保護される利益であるということができるが,本件のように職場が関わる場面において戸籍上の氏の使用を求めることは,その結果として婚姻前の氏を使用することができなくなるとしても,現時点でそれをもって違法な侵害であると評価することはできないというべきである。」と判示し(ただし、同判決は、「我が国における婚姻前の氏の使用の広がり,女性の社会進出の状況に照らせば,職場等において状況に応じて婚姻前の氏の使用を認めるよう配慮していくことが望ましいということができる」とも判示しております。)、教師の請求を棄却しています。
なお、我が国の民法は、夫婦同氏制を採っていますが、これが憲法違反になるかどうかが争われた事件の、最高裁大法廷平成27年12月16日判決は、憲法違反にはならないと判示しましたが、この理由中判断として、夫婦同氏制の合憲性を判断するに際して,「夫婦同氏制は,婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく,近時,婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ,上記の不利益は,このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得るものである。」と,旧姓使用が広まることが夫婦同氏制の合憲性を基礎づけ得ると述べています。
なお、この最高裁大法廷判決には、反対意見を述べた裁判官が1名おり、遠い将来までこの判決が実務を支配するものか否かは予断の限りではありません。