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共同保証人間の求償権の趣旨・消滅時効中断事由に関する初判例

2017年7月21日 公開 / 2017年7月22日更新

テーマ:民法雑学

コラムカテゴリ:法律関連

最高裁判所平成27年11月19日判決の紹介
時系列的事実関係
⑴ 信用保証協会Aと主債務者会社の代表取締役Bが、銀行債務につき、共同で、連帯保証人になる
某年某月某日、
債権者 甲銀行から、
主債務者 乙社が、借入をした際、
連帯保証人 信用保証協会A及び乙社の代表取締役Bが、共同で連帯保証をする。

⑵ 乙社の支払い停止
その後、乙社が甲銀行に支払いをしなくなった。

⑶ 保証協会Aの代位弁済
そのため、保証協会Aは、甲銀行からの保証債務の支払い請求を受け、甲銀行に対し、保証債務の履行として、乙社の残債務を全額弁済した。
これにより、保証協会Aは、主債務者である乙社に対し「主債務者に対する求償債権」と、他の連帯保証人であるBに対し、「連帯保証人間の求償債権」を取得した。

⑷ 主債務者に対する時効中断をする
 保証協会Aは、その後、主債務者乙社から、分割による方法で、求償権債権の弁済を受けてきたが、乙社が支払を停止した後、乙社に対し、求償債権の支払を求め訴訟を提起し、勝訴判決を得、判決は確定した(かくて、Aの主債務者に対する求償債権は消滅時効の中断ができた。)

⑸ その後、保証協会Aは、他の連帯保証人であるBに対し、求償債権の請求訴訟を起こした。
なお、その時点では、保証協会の主債務者に対する求償債権の消滅時効は中断しているが、他の連帯保証人Bに対する求償債権については、消滅時効期間は経過しているという関係であった。


【一審の判決】
 共同保証人間の求償権は,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものであるから,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合には,民法457条1項の類推適用により,共同保証人間の求償権についても消滅時効の中断の効力が生ずると解すべきである、

との理由で、保証協会を勝訴させました。

【二審及び最高裁判決】
 民法465条に規定する共同保証人間の求償権は,主たる債務者の資力が不十分な場合に,弁済をした保証人のみが損失を負担しなければならないとすると共同保証人間の公平に反することから,共同保証人間の負担を最終的に調整するためのものであり,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものではないと解される。
 したがって,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じないものと解するのが相当である。

かくして、二審、三審は、共同保証人間の求償権債権の時効中断措置をとらなかった保証協会を敗訴させました。

参照:
(共同保証人間の求償権)
民法465条 第442条から第444条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

(連帯債務者間の求償権)
民法442条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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