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信用保証協会、二度目の最高裁判決

菊池捷男

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テーマ:会社関係法

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小法廷平成28年1月12日判決に続く、最高裁判所第一小法廷平成28年12月19日判決です。
以上二つの最高裁判決に通底する考えは、「想定できること(最初の判例は、融資を受けた企業が反社会的勢力であった場合、次の判例は、融資を受けた会社が融資を受ける直前に融資を受ける資格を失っていた場合)について、その場合は、融資保証契約を無効にするのか否かについての約束をしていない場合は、仮に、錯誤によって信用保証契約を結んだといえても、信用保証協会は信用保証契約の無効を主張することはできない、というものです。

最高裁判所第一小法廷平成28年12月19日判決は、以下のような判示をしております。

(1)信用保証協会は,中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的とし(信用保証協会法1条),中小企業者等が金融機関に対して負担する債務の保証等を業務としている(同法20条1項)。したがって,信用保証協会が保証契約を締結し,金融機関が融資を実行した後に,主債務者が信用保証の対象となるべき中小企業者でないことが判明した場合には,信用保証協会の意思表示に動機の錯誤があるということができる。意思表示における動機の錯誤が法律行為の要素に錯誤があるものとしてその無効を来すためには,その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり,もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場合であることを要する。そして,動機は,たとえそれが表示されても,当事者の意思解釈上,それが法律行為の内容とされたものと認められない限り,表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相当である(ここで、最高裁平成28年1月12日第三小法廷判決を引用)。
(2)本件についてこれをみると、本件保証契約の締結前に,本件会社が事業譲渡によって本件制度の対象となる中小企業者の実体を有しないこととなっていたことが判明していた場合には,これが締結されることはなかったと考えられる。しかし,金融機関が相当と認められる調査をしても,主債務者が中小企業者の実体を有しないことが事後的に判明する場合が生じ得ることは避けられないところ,このような場合に信用保証契約を一律に無効とすれば,金融機関は,中小企業者への融資を躊躇し,信用力が必ずしも十分でない中小企業者等の信用力を補完してその金融の円滑化を図るという信用保証協会の目的に反する事態を生じかねない。そして,上告人は融資を,被上告人は信用保証を行うことをそれぞれ業とする法人であるから,主債務者が中小企業者の実体を有しないことが事後的に判明する場合が生じ得ることを想定でき,その場合に被上告人が保証債務を履行しないこととするのであれば,その旨をあらかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であったにもかかわらず,本件基本契約及び本件保証契約等にその場合の取扱いについての定めは置かれていない。これらのことからすれば,主債務者が中小企業者の実体を有するということについては,この点に誤認があったことが事後的に判明した場合に本件保証契約の効力を否定することまでを上告人及び被上告人の双方が前提としていたとはいえないというべきである。このことは,主債務者が本件制度の対象となる事業を行う者でないことが事後的に判明した場合においても異ならない。 
 もっとも,金融機関は,信用保証に関する基本契約に基づき,個々の保証契約を締結して融資を実行するのに先立ち,主債務者が中小企業者の実体を有する者であることについて,相当と認められる調査をすべき義務を負うというべきであり,上告人がこのような義務に違反し,その結果,中小企業者の実体を有しない者を主債務者とする融資について保証契約が締結された場合には,被上告人は,そのことを主張立証し,本件免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たるとして,保証債務の全部又は一部の責めを免れることができると解するのが相当である(ここでも前記最高裁平成28年1月12日第三小法廷判決が「参照」とすべき判例として引用されています。)。
 以上によれば,本件会社が中小企業者の実体を有することという被上告人の動機は,それが表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,本件保証契約の内容となっていたとは認められず,被上告人の本件保証契約の意思表示に要素の錯誤はないというべきである。

 なお、二つ目の最高裁判決が出た直後、中小企業庁・中小企業政策審議会・金融ワーキンググループから「中小企業・小規模事業者の事業の発展を支える 持続可能な信用補完制度の確立に向けて」と題する報告書が発刊されております(平成28年12月26日)。その概要は、信用保証協会と金融機関のリスク分担(保証付融資とプロパー融資の組み合わせ)を中小企業者の事情に応じて柔軟に調整していくというものであると説明されております(家森信善「信用保証制度の改革と事業性評価」金融法務事情2066号1頁)。

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