改正個人情報保護法の狙い ビッグデータを活用する新たな産業の創出
最高裁平成19年12月11日決定は、「金融機関は、顧客との取引内容に関する情報や顧客との取引に関して得た顧客の借用にかかわる情報などの顧客情報につき、商慣習上又は契約上、当該顧客との関係において守秘義務を負い、その顧客情報をみだりに外部に漏らすことは許されない。」と判示し、法律に明文はなくとも、金融機関には、顧客に対し秘密を守る義務が課されております。
しかしながら、金融機関の守秘義務は絶対的な義務ではありません。前記最高裁決定は、続けて、「しかしながら、金融機関が有する上記守秘義務は、上記の根拠に基づき個々の顧客との関係において認められるにすぎないものであるから、金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について、当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には、当該顧客は上記顧客情報につき金融機関の守秘義務により保護されるべき正当な利益を有さず、金融機関は、訴訟手続きにおいて上記顧客情報を開示しても守秘義務には違反しないというべきである。そうすると、金融機関は、訴訟手続上、顧客に対し守秘義務を負うことを理由として上記顧客情報の開示を拒否することはできず、同情報は、金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有する場合は別として、民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されないものというべきである。」と判示しているのです。
最高裁のこの決定は、次の2点で重要な意味をもっています。
その1は、金融機関の「当該顧客が民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には」、金融機関は、裁判所からの取引履歴提出命令を拒否できないこと、その2は、守秘義務を盾にとって、顧客の預金情報の提出を拒むことができるという点です。
要は、金融機関の守秘義務は、個人情報保護法とは直接関係するものではありません。