遺留分法理③ 遺贈(ここでは相続分の指定)+贈与により侵害された遺留分額の計算法理
法務局で登記手続をする場合,先例がないときは,容易に認めてもらえません。下記の事案も,そうで,家庭裁判所で遺産分割の調停が成立し,その遺産分割調書を登記原因証明情報として、代償分割により取得した不動産について所有権移転登記手続の申請をしたことに対し,法務局が認めなかったことから,訴訟に発展したケースですが,判例は,代償分割による代償物である不動産の取得を,「遺産分割による代償譲渡」という登記原因で,移転登記手続をすることを認めました。
すなわち,最高裁判所第一小法廷平成20年12月11日判決は,
① 家庭裁判所において遺産分割調停が成立し,上告人が,被相続人の遺産である土地を取得した代償として,他の相続人2名に対し,同年8月末日限り,上告人所有の建物を持分2分の1ずつの割合で譲渡する旨の条項を定めた場合,
➁その建物の譲渡が,上告人の本件譲受相続人に対する代償金支払義務があることを前提としてその支払に代えて行われるものとはされておらず,また,その譲渡に関し,本件譲受相続人から上告人に対して反対給付が行われるものとはされていないものであれば,
③ 「上記の合意は,上告人が本件譲受相続人に対し,遺産取得の代償として本件建物を無償で譲渡することを内容とするものであるということができる。そうすると,本件調書中の本件条項の記載は,登記の原因となる法律行為の特定に欠けるところがなく,当該法律行為を証する情報ということができる」から登記原因証明情報の提供を欠くことを理由に本件申請を却下した本件処分は違法というべきである。」と判示し,
④ 本件建物につき,登記原因及びその日付の記載を「平成18年6月15日遺産分割による代償譲渡」とし,登記原因証明情報として本件調書を添付した所有権移転登記の申請(以下「本件申請」という。)は有効であるとしました。