遺留分法理③ 遺贈(ここでは相続分の指定)+贈与により侵害された遺留分額の計算法理
これは,代償分割など,遺産分割協議で,相続人の一人が債務を負担した場合で,当該相続人が債務を履行しないときは,他の相続人は,遺産分割協議を解除することができるか?というと,遺産分割協議を解除することはできないというのが判例です。
すなわち,最高裁判所平成元年2月9日第一小法廷判決は,「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても、他の相続人は民法541条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。けだし、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は右協議において右債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解すべきであり、しかも、このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。」と判示しているからです。