遺留分法理③ 遺贈(ここでは相続分の指定)+贈与により侵害された遺留分額の計算法理
あけましておめでとうございます。
本年は,ホームページ上で,新著を上梓してみたいと思っています。
利点は,法令の改廃・判例の生成・変更に,迅速に対応した改訂ができること
実務の動きや変化を,これもまた迅速に反映させうること
などです。
最初の新著は,
最新の相続法理と法実務
驚愕の判例変更が遺産分割の風景を変えた
(平成28年12月19日最高裁判所大法廷決定)
です。
1か月以内に,第1章 遺産分割
だけでも先に,上梓する予定です。
はじめに
平成28年12月19日最高裁判所大法廷決定は,従来の判例を変更して,預貯金債権も,遺産分割の対象になるという判断をしました。
これより前,預貯金は,数量的に分割可能な債権という意味で,可分債権であるので,これは相続人ごとに相続分で分割取得できている。したがって,遺産分割の対象にはならないというのが,判例でした。
ですから,法律実務家に,それまでの知識を一擲(いってき)することを求めるこの判例変更は,一様に驚きをもって迎えられたものなのです。
とはいうものの,判例が改められ,それまでとは違った法理が開かれたことに対する法律実務家の対応は,無論,速いものです。要は,すぐに順応できるのです。
今は,時代も,法理も,急湍(きゅうたん)の速さで,変わってきています。
こと相続法理に関しても,非嫡出子の法定相続分を嫡出子と同一のものにした民法の改正が4年前,遺産分割の審判などの家事事件手続を迅速かつ効果的に進めるための改正家事事件手続法が施行されたのも4年前,そして,その後も,未開の分野での多くの判例の誕生がみられます。
近時の判例は,平成28年12月19日決定に見られるように,法理をより高度なものに高め,かつ,深めております。
すなわち,従前の法理は,金銭債権は可分債権だから相続開始の時から相続人ごとに分割されているという,いわば単純な論であったものが,今次の判例は,預貯金の種類ごとにその法的性格を分析し,かつ,遺産分割における預貯金の機能にまで言及して,論理を展開し,緻密にして世人が受け入れやすい結論を導き出しているのです。
私は,この新判例を機に,最新の相続法理をまとめてみようと思いたったものですが,前述のように,法理の生成と変化は実にめまぐるしいものがありますので,その変化に合わせて改訂を重ねていくことも必要です。
そこで,本書の題名を,「最新の相続法理と法実務」とするとともに,本書をインターネット上に上梓することにいたしました。
法令の改正や判例の誕生に合わせて,迅速に改訂できるからです。
相続や遺産分割や遺言,それに遺留分問題などに遭遇している方々には,参考にしていただけるものと思います。