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ストレスを感ずるか快味を感ずるかは,弁護士の姿勢で決まる

2016年12月14日

テーマ:諺にして学ぶ法 

コラムカテゴリ:法律関連

甲弁護士は,自分はなんでこんなストレスの多い職業を選んだのかと悩み,
乙弁護士は,緊張と苦しみはあるが,弁護士の仕事ほど快味を感ずるものはないと言う。

甲弁護士に,どの点でストレスを感ずるかと問うと,例えば,依頼者の要請に従っておれば,その要請はいくらでもエスカレートし,その要請に応えることができなくなると,依頼者から責められ、攻撃されるのがつらい,と言う。
詳しく訊けば,甲弁護士は,依頼者から,事件の相手方に対し,依頼者の権利を超える要求をしてくれと言われ,相手方にそれを求めたそうである。しかし,当然,相手方は,そんな要求は容認することはない。
そこで,甲弁護士,そのことを依頼者に伝えると,依頼者は,甲弁護士を無能なりと言って責めたそうである。

これを側で聞いていた乙弁護士,僕が甲弁護士の立場にいたら,その依頼者からの要請を,弁護士は法的権利を超える要求を相手方に伝えることはしないよと,言って断っただろう,と言う。
続いて,乙弁護士,甲弁護士に向かって,弁護士は,権利を超える要求を相手方に伝えることはできないのだよ。また,義務ある依頼者に義務から逃れさせることもできないのだよ。依頼者のできることと,できないこと,しなければならないこと,しなくともよいこと,その辺りのけじめを,正しく依頼者に知ってもらうことが大切だよ。さあ,考えてごらん。君がそのことを依頼者に伝えていたら,今回の依頼者は,はたして,相手方に権利を超える要求をしたと思うかい。そのような要求を相手方に伝えるよう,君に頼んだと思うかい。

最後に,乙弁護士,甲弁護士に向かって,弁護士が仕事でストレスを感ずるとすれば,それは,法という物差しから離れた考えや行動をとった場合じゃないかな。
弁護士が,仕事の物差しを忘れさえしなければ,たとえ,力及ばず悪い結果がでても,ストレスは生じないのではないかな。逆に,全力を挙げての弁護士活動の結果,仕事を成功させたときの快味は,一生忘れ得ないほどのものになるのではないかな。

昔,昔の,甲弁護士と乙弁護士の会話を,今,思い出したところである。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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