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反社会的勢力を主債務者とする保証契約の効果について判示した,4件の最高裁判所第三小法廷平成28年1月12日判決を,まとめますと,
⑴ 主債務者が反社会的勢力でないことそれ自体が,当然には,金融機関と信用保証協会との間の保証契約の内容にはならない。
したがって,金融機関が反社会的勢力に融資をし,その返済が受けられなくなった場合は,保証契約に基づき,信用保証協会に対し保証債務の履行を請求することができる。
⑵ しかしながら,金融機関と保証協会との基本契約には,金融機関が「保証契約に違反したとき」は,保証協会は金融機関に対する保証債務の履行につき,その全部又は一部の責めを免れるものとする免責条項が定められているので,それに該当する場合は,保証債務の全部又は一部につき履行を拒否できる。
⑶ 金融機関及び保証協会は,保証契約上の付随義務として,個々の保証契約を締結して融資を実行するのに先立ち,相互に主債務者が反社会的勢力であるか否かについてその時点において一般的に行われている調査方法等に鑑みて相当と認められる調査をすべき義務を負う。そして,金融機関がこの義務に違反して,その結果,反社会的勢力を主債務者とする融資について保証契約が締結された場合には,本件免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たる(その場合は,信用保証協会は,その全部又は一部の責めを免れる)。
⑷ 免責の要件の有無,免責の範囲は,原審において審理すべきである。
というものです。
本件判例の意義
金融機関が融資した先が反社会的勢力であり,融資金が返済されない場合,金融機関と信用保証協会の保証契約を無効だとすると,信用保証協会はその保証の責任はなくなり,金融機関のみが損失を甘受しなければならなくなり,また,保証契約が無効でないとすると,信用保証協会のみがその損失を甘受しなければならないことになりますが,今回の判例は,融資金の回収不能による損害を,信用保証協会,金融機関双方の責任とみて,その責任割合を,審理判断させるために,原審判決を破棄し,原審に差し戻したものです。
100か0かではなく,その中間のどこかに,それぞれの責任割合に応じて,損失を分担させようというのが,今回の判例の,実にバランスの取れた判断だと思います。