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反社会的勢力を主債務者とする保証契約の効果(判例2)

菊池捷男

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テーマ:会社関係法

最高裁判所第三小法廷平成26年(受)第1351号平成28年1月12日判決
(昨日のコラムの判決とは別件の判決)は,昨日の判決と同様の法律判断,すなわち,
⑴ 主債務者が反社会的勢力でないことそれ自体が,当然には,金融機関と信用保証協会との間の保証契約の内容にはならない。
と判示した上で,論を更に一歩前進させ,
⑵ しかしながら,金融機関と保証協会との基本契約には,金融機関が「保証契約に違反したとき」は,保証協会は金融機関に対する保証債務の履行につき,その全部又は一部の責めを免れるものとする免責条項が定められている。
⑶ 信用保証協会は,・・・貸付金等の債務を保証することを主たる業務とする公共的機関であり(信用保証協会法1条参照),信用保証制度を維持するために公的資金も投入されている。また,本件指針等により,金融機関及び信用保証協会は共に反社会的勢力との関係を遮断する社会的責任を負っており,その重要性は,金融機関及び信用保証協会の共通認識であったと考えられる。他方で,信用保証制度を利用して融資を受けようとする者が反社会的勢力であるか否かを調査する有効な方法は,実際上限られている。
⑷ 以上のような点に鑑みれば,主債務者が反社会的勢力でないことそれ自体が金融機関と信用保証協会との間の保証契約の内容にならないとしても,金融機関及び保証協会は,本件基本契約上の付随義務として,個々の保証契約を締結して融資を実行するのに先立ち,相互に主債務者が反社会的勢力であるか否かについてその時点において一般的に行われている調査方法等に鑑みて相当と認められる調査をすべき義務を負うというべきである。そして,金融機関がこの義務に違反して,その結果,反社会的勢力を主債務者とする融資について保証契約が締結された場合には,本件免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たると解するのが相当である。
⑸ 本件についてこれをみると,本件各貸付けの主債務者は反社会的勢力であるところ,金融機関が上記の調査義務に違反して,その結果,本件各保証契約が締結されたといえる場合には,保証協会は,本件免責条項により本件各保証契約に基づく保証債務の履行の責めを免れるというべきである。そして,その免責の範囲は,上記の点についての保証協会の調査状況等も勘案して定められるのが相当である。
5 以上によれば,原審の,保証協会の本件各保証契約の意思表示に要素の錯誤があったとはいえないとの判断は是認することができるが,本件各貸付けについて,本件免責条項にいう金融機関が「保証契約に違反したとき」に当たらないとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。
6 保証協会の保証債務の免責の抗弁について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
と判示しました。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

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