賃借人が賃借建物内で死亡していたとき
大阪地方裁判所平成4年3月13日判決は,
1 百貨店は、一般的に、店舗内の有効利用を図って売場やレイアウトを適宜に決定する必要性が高い業務形態であるところ、・・・顧客のニーズに合わせて臨機応変に売場を設定するなど、限られたスペースを最大限有効に活用する必要性が極めて高く、そのため、本件建物内で営業をする外部の業者との契約に当たっては、賃貸借契約とは異なる趣旨の契約であることを要し、借家法等の適用の排除を前提とする必要があった。
2 本件契約に関し、百貨店とテナントとの間には、通常賃貸借契約に付随する権利金、敷金、保証金等の金員の授受は全くされていない。
3 また、本件売場部分における営業の売上代金は、百貨店が、テナントから毎日全額を収納したうえ、その一八パーセントを歩金として控除して、テナントに返還する形式をとっており、右歩金は、通常月額や年額等によって固定される賃料と異なり、その日の売上の増減に従って、増減し、最低補償額の定めもないものである。
4 本件売場部分の営業のための食品衛生法上の許可は百貨店の名で受けており、右許可証には、テナントの名称は、記載されていない。
5 本件売場部分における営業について、原則として百貨店が決めた包装紙を使い、領収証やレシート等も百貨店の名前で発行されている。
6 本件売場部分を含む地下二階の売場に関しては百貨店及がその指定及び変更を何時でも指示することができ、現にテナントは、過去に百貨店が実施した大規模な店内改装等を内容とする「リフレッシュ計画」に従って、現在の本件売場部分に売場の位置を変更した。
7 本件売場部分に関する水道、電気、ガス、空調及び照明等については百貨店が契約の主体であるが、本件売場部分に固定されているカウンター、椅子等、また、営業に必要な什器備品類は、テナントの費用負担で備えられており、かつ従業員の採用や給料の支払もテナントが行っている。
8 テナントは、本件売場部分を含めて五店舗で「サンレモ」の名称で、スパゲッ売のチェーン店を営業しており、本件売場部分においても、「サンレモ」の文字の記入された箸袋やナプキン等を使用している。
9 以上の事実を総合すれば、テナントの本件売場部分における営業は相応の独立性を有するものと言えるが、他方、賃貸借契約に通常付随する権利金、敷金等の授受が当事者間に全くなく、原告の収得する金員も日々の売上金の一定割合をもって定められる歩金であって賃料とは全く異なること、売場の設定、変更等について原告の強い権限が及んでいること、さらには契約当事者の意思などを併せ考慮すると、本件契約は、賃貸借契約であると言うことはできず、借家法等の適用のない販売業務委託契約であると言うべきである。
と判示しました。
しかしながら,この裁判例は, 百貨店とテナントとの間の契約が賃貸借契約と認められないとしても,百貨店側がテナントに対し,「解除や解約告知等によって、一方的に本件契約を破棄するためには、解除の事由やその背景事情等において,右来歴経過からみても止むを得ないと言えるような合理的理由が必要であると解するべきである。」と判示した上で,その件では,解除を認めるに足る合理的理由はないと判示し,テナントに一定の法的地位を認めました。