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財産分与をした者に,譲渡所得課税がなされる判例理論

菊池捷男

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テーマ:民法と税法

最高裁判所第三小法廷昭和50年5月27日判決は,
「譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものであるから、その課税所得たる譲渡所得の発生には、必ずしも当該資産の譲渡が有償であることを要しない。
 したがって,所得税法33条1項にいう「資産の譲渡」とは、有償無償を問わず資産を移転させるいつさいの行為をいうものと解すべきである。・・・・
 ところで、夫婦が離婚したときは、その一方は、他方に対し、財産分与を請求することができる(民法768条、771条)。この財産分与の権利義務の内容は、当事者の協議、家庭裁判所の調停若しくは審判又は地方裁判所の判決をまつて具体的に確定されるが、右権利義務そのものは、離婚の成立によつて発生し、実体的権利義務として存在するに至り、右当事者の協議等は、単にその内容を具体的に確定するものであるにすぎない。そして、財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがつて、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによつて、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。
 してみると、本件不動産の譲渡のうち財産分与に係るものが上告人に譲渡所得を生ずるものとして課税の対象となるとした原審の判断は、その結論において正当として是認することができる。」
と判示しました。

 要は,財産分与として不動産を譲渡した者は,それによって財産分与義務が消滅したのであるから,財産分与義務の消滅という利益を受けたことになる。それは譲渡収入ということになるので,譲渡所得 ( 財産分与時点の時価から不動産の取得費用及び譲渡費用を控除した後のプラスの金額 ) が発生した場合は,所得税(俗にいう譲渡所得税)が課されということです。

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菊池捷男(弁護士)

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