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事業の承継3 何故,経営者は,小説「徳川家康」を読むのか?

菊池捷男

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テーマ:事業の承継

 苦しみよ!不幸よ!汝らは決して悪いものではない。
 苦しみや不幸の経験は、その原因を教えてくれ,かつ,その打開の方法を考えさせてくれる。
 人に,学問があれば,この知識と知恵から,哲学が生まれる。
 哲学とは,苦しみや不幸に打ち勝つ理を,分かりやすい言葉で表現する力であり,論理であり,光である。
 だから,苦しみや不幸は,悪いものではない。

 これは,アレクサンドル・デュマが、小説「モンテ・クリスト伯」の中で、ファリア神父の口を通して語った言葉です。

 そして,ファリア神父は,エドモン・ダンテスを無実の罪に陥れ,光すら差さない監獄に送った犯人達を,この哲学と論理を拠り所として,解明してみせるのです。
 すなわち,ファリア神父は,「罪は,そこから利益を得るものによって犯される。」という法の箴言(しんげん。諺・格言と同義)を用い,論理をもって,ダンテスを牢獄に送ることで利益を受ける者として,ダンテスから許嫁を奪う利益のあったフェルナン,犯罪の隠蔽とダンテスの地位を奪う利益のあったダングラール,父親の名前が出ることによって身の破滅を招くことから逃れる利益のあったヴィルフォールを,浮かび上がらせ,彼らが犯人であると断ずるのです。
その後,脱獄したダンテスの調査で,ファリア神父の言ったことが真実であったことが分かるのですが,論理と哲学をもって考えろ,と言ったファリア神父の言は,まさに正鵠を射たものであったのです。

 山岡荘八の書いた小説「徳川家康」が、多くの経営者に読まれるのは、波瀾万丈の家康の生涯を描く,戦国史の面白さと、彼の粒々辛苦の中から生み出した哲学(格言)が、経営者の心を捉えたからであろうと思われます。

 徳川家康は、実に多くの格言を残しています。この格言は、アレクサンドル・デュマのいう哲学であり、光ですが、その格言を読み、自分自身の思いと重なる部分に、大きく頷き、まだ、経験していない格言には啓示を受け、経営や生き様の基準にしようと意欲する経営者の姿が、想像されるところです。

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