大切にしたいもの いたわり
“苦痛よ!汝は決して悪いものではない。”
この言葉は,19世紀の文豪アレクサンドル・デュマが,文中に引用した“ことわざ”
です。
この諺を引用しながら,デュマは,いいます。
苦痛は,人に,哲学を与える。
哲学とは,その人が学んだすべてから帰納して,原理を分かりやすく説明できる光だ。
光は,人智の中に隠れている不思議な鉱脈から掘り出される。
鉱脈を掘るためには,苦しみや不幸というものが必要だ。
だから,苦痛は悪いものではない。
というのです。
人が生きていく,この世の中には,筋の通った原理や原則がある,ということは,頭の中では理解できますが,それを我にも,人にも,分かりやすく示す,ということは簡単なことではありません。
しかし,人智の中に隠れている鉱脈があり,何かが触媒になって,そこから,生きていく上の原理,原則を照らし出す,光を放出させることができるのなら,その触媒を手に入れたいものです。
デュマは,その触媒は,苦痛であり,不幸だというのです。
だったら,苦痛や不幸の経験は,得がたい教師というべきです。
苦しみ,痛みの経験は,大切にしたいものです。