結ぶべきは、賃貸借契約か使用貸借契約か?
Q 当社は賃貸用マンションの所有者です。各賃借人とは「ペット飼育禁止特約」を結んで住戸を賃貸していますが,そのうちのA氏が室内用のペットを飼っていることが,犬をマンション外へ連れ出して散歩させていることから,他のマンション住人に分かり,当社に契約違反者を許すのか,という苦情になってきました。当社は,A氏との賃貸借契約を解除することができますか?
A
ペット飼育禁止特約があるにもかかわらず,入居者がこの特約に違反し,ペットを飼育したとの事実がある場合には,賃貸人は,入居者の債務不履行を理由に賃貸借契約の解除をすることは,原則として,できます。
ただし,判例は,賃貸借契約上の義務違反があった場合でも,いまだ信頼関係を破壊するに至らない場合には,契約の解除は認められないとの信頼関係破壊の法理を採用しています(最高裁昭和51年12月17日判決等)。
裁判例では,ペット飼育禁止特約違反のみを理由に,契約の解除を認めたものもありますが(東京地裁平成7年7月12日判決),ペット飼育禁止特約違反の事実に加え,他の事情も考慮した上で,信頼関係を破壊しているので,解除を認めるという裁判例が多いようです(東京地裁平成24年11月13日判決,東京地裁昭和59年10月4日判決,東京地裁昭和58年1月28日判決等)。
貴社の場合,マンションの住民全員が,ペットの飼育を禁じられているのなら,A氏一人だけが認められるということにはならないと思われますので,賃貸借契約の解除は認められるであろうと思われます。
ただ,貴社とA氏の賃貸借契約で,①全賃借人とペット飼育禁止特約を結ぶ理由は何か?➁ペットを飼育することの弊害は何か?③賃借人にどの程度ペット飼育を禁ずることの重要性を説明したか?は問われると思いますので,再度,それらの事情をA氏に説明して,A氏にペットの飼育を止めることを求め,それでも止めない場合に,賃貸借契約を解除するという方法をとるべきだと思います。