契約書知識 15 契約書の記載事項(2)
いいえ。次の代理人又は表見代理人にも契約締結の権限があります。
1 代理人又は表見代理人
⑴ 支配人
会社の支配人については,会社法10条で,「会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。」とされ,同法11条1項で,「支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」とされていますので,「その事業に関して」は,契約締結の権限を有します。
⑵ 表見支配人
会社法13条は,「会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。」と規定していますので,支配人ではなくとも,支店長などの肩書きを有する者も,契約を結んだ場合,有効になるのが原則です。
⑶ ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
会社法14条1項は,「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。」と規定していますので,この場合の使用人も一定の契約締結権源を有しています。
⑸ 物品の販売等を目的とする店舗の使用人
会社法15条は,物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。」と規定していますので,その限りで契約締結の権限が認められます。
なお,会社でない場合であっても,商法20条及び21条は「支配人」について,商法24条によって「表見支配人」について,商法25条によって「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」について,商法26条によって「物品の販売等を目的とする店舗の使用人」について,会社法と同じ規定を置いています。
2 非顕名の場合
なお,これら支配人や使用者は,代理人になるのですが,商法504条により,「商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。」という規定がありますので,彼らが代理人を名乗らなくとも代理権限は否定されません。