(補説) 固定資産税等が高いと思ったときの争い方
5 競売で不動産を失った場合,買受人に対し,固定資産税の精算を請求できるの?
Q 固定資産税が財産税の性質を有するのであれば、競売によって不動産を喪失した者が、喪失した日の翌日以降も固定資産税を負担するのは法律上原因のない負担になり,一方,競売による買受人が買受日の翌日以降翌年4月前まで固定資産税を納める義務がないとなると,それは法律上の原因のない利得とは言えないのか?
つまり、競売によって不動産を失った者から、競売による買受人に対し、買受人が不動産を取得した日の翌日以降固定資産税の日割り精算額を法律上の原因無くして利得したとして、不当利得返還請求ができないか?
A この問題について、東京高裁昭和41.7.28判決は、積極説に立ち、不当利得返還請求を認めましたが、大阪地方裁判所平成23.2.7判決は、消極説に立ち、不当利得にはならないと判示しました。
その間にあって折衷説ともいうべき、東京高裁平成13.7.31判決は、「不動産競売手続により不動産を取得した者が、その不動産について、取得日が4月1日から翌年1月1日までの間である場合にあっては、当該年度に係る固定資産税等相当額、取得日が1月2日から3月31日までの間である場合にあっては、当該年度及び翌年度に係る固定資産税等相当額を負担しないとしても、その不動産競売手続において上記固定資産税等相当額を買受人に負担させることを前提として不動産の評価がされ、最低売却価額が決定されたなどの特段の事情のない限り、上記固定資産税等相当額を不当に利得したということはできないというべきである。最高裁昭和47.2.25判決は、この観点から見た場合、事案を異にすることが明らかであるということができる。」と判示しています。この説は、「不動産競売手続において固定資産税等相当額を買受人に負担させることを前提として不動産の評価がされ」ている場合に限り、不当利得返還請求ができるという見解ですが、現実の不動産競売では、そのような不動産評価はされていませんので、結局のところ、消極説と変わらない結論になります。