(補説) 固定資産税等が高いと思ったときの争い方
マンションの住戸に閉じ籠もれば,1つの閉鎖社会
目を閉じ,耳を塞ぎ,口に枚を含まなくとも,誰も干渉はしない
しかし,他の住人との共同生活は乱すなかれ,であり,
そこには自ずと,厳しい義務が課せられる
これ,マンションの区分所有者の逃げることにできない宿命なり
1 義務の内容
(1) 共同利益背反禁止義務
マンションを買うと,種々の義務が生じます。一棟の建物の中で共同生活をするのですから,当然のことです(区分所有法第6条1項)。
その義務の1つに,他の区分所有者との共同の利益に反してはならないという義務(「共同利益背反禁止義務」)があります。
①物理的な損壊禁止
・隔壁の破壊(東京高裁昭和53.2.27判決)
・壁の穴開け(東京地裁平成3.3.8判決)
➁規約違反の専用部分での
・ペット(犬)の飼育(東京地裁平成16.3.31判決)
・カラオケボックスの営業(東京地裁平成4.1.30判決)
・保育室としての使用(横浜地裁平成6.9.9判決)
・税理士事務所として使用(東京高裁平成23.11.24判決)
③規約違反の共用部分である,
・バルコニーでの温室の設置(最判昭和50.4.10)
・ルーフテラスへのサンルーム設置(京都地裁昭和63.6.16判決)
・庭園を駐車場にした行為(東京地裁昭和53.2.1判決)
などです。
なお,これらの義務の違反が甚だしいときは,住戸の使用の禁止や,退去や,競売まで申し立てられることもあります(区分所有法58~60条)
東京地裁平成17.9.13判決は,専有部分に入居している者が,奇声を発し,騒音,振動を引き起こした事案で,専有部分の所有者と入居者との間の賃貸借契約の解除と専有部分の引渡しの請求と,また,専有部分の競売の請求まで認めました。
東京地裁平成7.11.21判決は,バルコニーで野鳩の餌付けをし,悪臭,鳥の死骸,糞,羽毛,騒音なふぉの被害を生じさせた専有部分の入居者に対し,所有者との使用貸借契約を解除して,その者が占有している部分の引渡しの請求と,200万円の損害賠償の請求を認めました。
(2) 他の区分所有者の住戸内立入承諾義務(区分所有法6条2項)
これは,下の階から水漏れがしてきたので,室内に入って調べさせてくれなどの請求があれば,応じなければならないという義務です。
マンションなど区分所有権特有の義務です。
(3)管理費,修繕積立金等の支払義務
この義務は,管理組合から見ると債権になりますが,この債権には一般の先取特権がついています(区分所有法第7条)ので,この義務を履行しない場合は,裁判手続をしないでも,マンションの住戸や住戸に備え付けた動産が競売にされることになります。
なお,管理費用は,区分所有者がマンション内に現住している現住組合員の場合は1万7500円,不現住組合員の場合は2万円にするという程度の差を設ける規約の変更は有効だと判示した判決(最高裁判所平成22年1月26日判決)があります。