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(補説) マンション壁面タイルの剥離と建築会社の責任

菊池捷男

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テーマ:不動産法(売買編まとめ)

マンションの外壁タイルとかけて,何と解く
女性の顔と解く
その心は?
いつまでも美しくあってほしいもの

もし,マンション外壁のタイルが剥離したとき・・・
 東京地裁平成20.12.24判決に書かれた内容ですが,
 コンクリートの壁面にタイルを貼る工事は,施工面であるコンクリート躯体を清掃した上で、これに吸水調整剤を塗布し、その後、下地モルタルを塗り付け、タイルを張るという手順で行われるが,下地モルタルを一回で厚く塗り付けると、コンクリート躯体との界面で剥がれやすくなるので,タイル貼りに安定した耐久性をもたせるためには、コンクリート躯体に薄くモルタルを塗り付け(「下擦り」)、それが乾燥した後、モルタルを塗り付けことを繰り返す必要があるところ,各材質には線膨張係数、乾燥収縮率に差異があるため、温湿度の変化によって、材質ごとに異なる動きを生じて接着界面に剪断応力が発生し、剪断応力が、接着力が最も弱い接着界面の接着力を上回ると、当該接着界面が剥離することになる。したがって,タイル張り工事は,各資材ごとの特質を考慮した施工の必要性が大きく,そのためには,各資材メーカーが定めた施工要領書に従い,また,「建築工事標準仕様書・同解説 JASS19 陶磁器質タイル張り工事」や「建築工事標準仕様書・同解説 JASS15 左官工事」に従い,施工をする必要があり,これに違反した施工をした結果,タイルの剥離が生ずると不法行為(過失)が認定される旨判示しています。
 また,同判決は,タイル張の剥離故障は、剥離の発生時期により、初期故障と疲労故障に大別され,初期故障は、施工当初から何らかの原因により接着界面に十分な接着力が発現せず、施工後の劣化外力(日射、雨水、地震等)の作用に伴い剥離するもので、施工直後から数年の間に発生し、同時期に大量に剥離する場合が多く,一方,疲労故障は、劣化外力の作用による温湿度変化等に伴い繰り返し生ずる接着界面の剪断応力により、接着界面が疲労し、経年により接着力が徐々に低下して剥離に至るもので、施工時の接着力に応じ、施工後数年から数十年の経過により、段階的、部分的に剥離を生ずるものである,とされています。タイルの接着力が低下する原因には、初期故障においては、材料選択の誤り、工法選択の誤り、施工上(下地清掃、下地処理、モルタル混練、モルタル塗付方法等)の誤り等があり、また、疲労故障においては、地震による変形、吸水・乾燥に伴う伸縮、温度変化に伴う伸縮等があり、とりわけ顕著な原因となるものとして、日照の有無によって生ずる温度変化の結果発生する伸縮がある,とされています。
 同判決は,コンクリート壁面に貼られたタイルの剥離につき,施工業者の不法行為を認めた判決ですが,この判決は,マンションの壁面が剥離した場合に,施工業者の責任を追求するに参考になる判決です。マンションがまだ新しいのに,したがって,疲労故障など生ずる環境にないのに,剥離するような事態になったときは,この施工業者の過失(不法行為)責任を考えるのも一方法です。
 ただ,筆者の知るところ,マンションの外壁の剥離は外部から見ても目に付き,施工業者としても,その信用にかけて,無償で貼り替え工事をしているように思えます。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

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