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農地 転用目的による農地の売買と消滅時効期間

菊池捷男

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テーマ:不動産

1,転用許可申請協力請求権の時効期間
 農地を転用目的で売買する場合,農地法5条の許可を得なければなりません。そのために農地の買主は売主に対し,転用許可申請をすることの協力(具体的には申請書の譲渡者欄に署名押印すること)を請求することができます。これは「転用許可申請協力請求権」といわれます。
この転用許可申請協力請求権は,“人に対する”権利ですから,債権になります。
債権の消滅時効期間は,10年です(民法167条1項)ので,転用許可申請協力請求権も10年で時効消滅します。
しかし,売買契約が商行為にあたる場合は,商法522条の適用を受け,5年で時効消滅するという裁判例(東京地裁平成5.12.21判決)があります。

2,転用許可申請協力請求権の時効期間が経過した後でも,土地が取得できる場合
 最高裁判所昭和61.3.17判決は,「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当であり、農地の買主が売主に対して有する県知事に対する許可申請協力請求権の時効による消滅の効果も、10年の時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、売主が右請求権についての時効を援用したときにはじめて確定的に生ずるものというべきであるから、右時効の援用がされるまでの間に当該農地が非農地化したときには、その時点において、右農地の売買契約は当然に効力を生じ、買主にその所有権が移転するものと解すべきであり、その後に売主が右県知事に対する許可申請協力請求権の消滅時効を援用してもその効力を生ずるに由ないものというべきである。」と判示していますので,農地転用許可申請協力請求権の時効期間が経過した後でも,土地が非農地になるのを待っておれば,その時に土地は自動的に買主の者になりますが,途中でへんに争ったりすると,売主が農地転用許可申請協力請求権の時効を援用するかもしれません。その場合は,土地の取得はできません。

 なお,農地法は現況主義をとっていますので,登記簿記載の地目が農地でも,非農地になった後は,農地法の適用を受けません。
 ですから,農地につき売買契約を結んだ以後,非農地になった時は,その原因を問うことなく,当該非農地は,その時に,買主に移転するのです(最高裁判所昭和44.10.31判決)。これにより,買主は売主に対し,所有権移転登記手続の請求ができます。売買契約の後で,所有権移転仮登記手続を経由している場合は,本登記手続の請求ができることになります(最高裁判所昭和52.1011判決。)

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菊池捷男(弁護士)

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