継続的契約の一方的な解約は許されるか?
Q
私の息子の場合についてお尋ねします。
昨日のコラムに書かれたように,判例(最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決)によれば,大学が定めた入学手続の要領には授業料等の不返還特約がある場合で,かつ,大学の入学試験に合格して授業料等を納めた場合であっても,入学する年の3月31日までに入学辞退をした場合は,授業料等の返還請求ができるが,4月1日以降に入学辞退した場合は,返還請求ができない,ということですが,授業料等の返還請求ができる理由が,入学辞退(在学契約の解除)が織り込み済みのものであることになっています。そうであれば,私の息子が受験した大学の場合は,毎年度,学生募集要項に、補欠者につき4月7日までに通知がない場合に不合格になる旨記載されており,また,私の息子が受験した大学では,毎年,4月1日以降に3~4名の補欠者を繰上げ合格させているという現状にありますので,大学は,4月7日まで最終的な合否の判定を留保する取扱いが確立していたというべきであろうと思います。そうであれば,私の息子は4月2日に入学辞退を申し入れてまいますので,授業料等の返還請求はできるのではないでしょうか?
A
最高裁判所第三小法廷平成22年3月30日判決は,
あなたのケースと同じ事件で,
「学生募集要項の上記の記載は,一般入学試験等の補欠者とされた者について4月7日までにその合否が決定することを述べたにすぎず,推薦入学試験の合格者として在学契約を締結し学生としての身分を取得した者について,その最終的な入学意思の確認を4月7日まで留保する趣旨のものとは解されない。また,現在の大学入試の実情の下では,大多数の大学において,3月中には正規合格者の合格発表が行われ,補欠合格者の発表もおおむね終了して,学生の多くは自己の進路を既に決定しているのが通常であり,4月1日以降に在学契約が解除された場合,その後に補欠合格者を決定して入学者を補充しようとしても,学力水準を維持しつつ入学定員を確保することは容易でないことは明らかである。これらの事情に照らせば,大学の学生募集要項に上記の記載があり,大学では4月1日以降にも補欠合格者を決定することがあったからといって,大学において同日以降に在学契約が解除されることを織り込み済みであるということはできない。そして,専願等を資格要件としない推薦入学試験の合格者について特に,一般入学試験等の合格者と異なり4月1日以降に在学契約が解除されることを当該大学において織り込み済みであると解すべき理由はない。」と判示して,学生が納めた授業料等が初年度に納付すべき範囲を超えていない以上,返還請求はできない旨判示しております。