民法雑学 4 公立病院における診療債権、水道料金債権など自治体債権の消滅時効期間
昨日のコラムの続きです
3,東京高等裁判所平成25年4月11日判決
同判決は,
弁護士法23条の2に基づく報告の請求については,弁護士個人には銀行に対し,直接調査を求める権利はない,と判示しました。すなわち,
①弁護士法23条照会制度(で)・・・照会をする主体は弁護士会であり、・・・銀行が本件各照会に対して回答すべき義務を負うとしても、・・・弁護士に対して直接義務を負うものではない。
➁・・・銀行が回答することによる利益は、弁護士(の依頼者)にとっては反射的利益にすぎないのである・・・。
③・・・仮に、弁護士において銀行が本件各照会に回答しなかったことにより自己の権利等について危険又は不安が生じたというのであれば、・・・回答拒否が違法であることを理由とする民法709条に基づく損害賠償請求等による方がより有効かつ適切である。
④以上によれば、本件各照会に対する回答義務の確認を求める訴えは、確認の利益がなく不適法というべきである。
と判示し原審の東京地裁平成24年11月26日判決を取り消し,弁護士からの請求を棄却しました。
4,問題点
(1)報告を求める権利の帰属主体
銀行に対する報告請求権は,東京高裁判決のいうとおり,弁護士会にあることになります(条文の字句がそうなっている)。
(2)銀行には報告する義務があるのか?
昨日のコラムに書いた東京地裁判決では,義務があることになります。高裁判決も否定はしていません。
(3)銀行が正当な理由なくして報告を拒否した場合,弁護士はどうすることができるのか?
東京高裁判決の前記③の判示部分によれば,弁護士(の依頼者)から銀行に対し,損害賠償請求ができることになるようにも読めますが,➁の理由では損害賠償請求権は否定されます。
5,未解決部分が多い。
この件については,まだ最高裁判所の判例はありません。
4の問題点の(3)により弁護士又はその依頼者から銀行に対する損害賠償を請求した事件の事例もないようです。