遺言執行者⑭遺留分減殺請求先に要注意
1,債務
債務は,各相続人に,相続分に応じた可分債務として,相続されます(最高裁昭和34.6.19判決)ので,遺産分割の対象になるものではありません。
被相続人に1000万円の債務があって,相続人が妻と長男と長女の3人,遺言書がない場合は,妻の相続する債務額は500万円だけです。長男と長女はそれぞれ250万円だけです。自分の相続分を超える債務額を相続することはありません。
2,遺産管理費用
遺産にかかる固定資産税などの公租公課その他の遺産管理費用は,相続開始後生ずるもので,相続債務でもなく,遺産分割の対象にはなりません。この費用は,相続人が,相続分に応じて,分割債務として支払うものになります。
3,相続分の意味
相続分とは,遺言による指定相続分があればそれ,なければ法定相続分になりますが,債権者は,法定相続分か指定相続分を選択して,相続人に請求することがができます(最高裁判所平成21.3.24判決)。
4,指定相続分の意味
指定相続分とは,遺言書で指定された相続分のことですが,それには単純に割合でもって指定する場合(例,私は妻の相続分を3/5,長男の相続分を1/5,長女の相続分を1/5と定める。)と,遺産分割方法の指定遺言の場合(例,私は自宅と預貯金全部を妻に相続させ,A社の株式を長男に相続させ,その余の財産を長女に相続させる。)があります(遺産分割方法の指定が同時に相続分の指定になることは,東京高裁昭和45.3.30判決及び平成元.2.27判決)。
前者の場合は,分かりやすいのですが,後者の場合は,各相続人が取得した財産の全相続財産に対する割合が,相続分になります((例についていえば,妻が取得した自宅と預貯金の全財産に対する割合が妻の相続分になり,A社の株式の全相続財産に対する割合が長男の相続分になり,その余の財産の全相続財産に対する割合が長女に相続分になります。)。