契約書知識 16 契約書の表記は公用文表記法による
1,民法改正が近い
昨年の9月に,法務省から民法(債権関係)の改正仮案が公表されました。本年2月までに要綱がまとめられて公表され,3月以降改正法案が国会に上程され,民法(債権関係)改正法が成立し,来年か再来年あたり改正民法が施行される見込みです。
2,法律概念が変わる
改正民法の時代を迎えると,それまでに存在していた法律概念(法律用語)が変わるという現象が起こります。例えば,「瑕疵」という用語です。「瑕疵」は改正法の下では「種類又は品質に関して契約に適合しない目的物」という言い方になります。
すなわち,仮案第30は,「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合の事実を知った時から1年以内に当該事実を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時に目的物が契約の内容に適合しないものであることを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときは、この限りでない。」と定めているからです。
3,契約書を書く場合,用語が違ってくる
法律概念が変われば,契約書に書く法律概念もまた変わってきます。
「瑕疵」という用語は使われなくなり,「契約不適合」という用語に変わるなどです。
なお,現在の民法では存在する「隠れた瑕疵」という概念の「隠れた」に相当する概念は,改正民法の中にはありません。
ですから,契約書を書く場合も,用語を変えただけでよいというものではありません。
ですから,これからの契約書に書く文言は,これまでなら「瑕疵があったときは」又は「隠れた瑕疵があったときは」と書いていた場合も,これからは「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物であったとき」という書き方をすべきことになります。場合によっては,「瑕疵(種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物)」というように,瑕疵という言葉を使い,その意味として改正民法の言葉を書く書き方をしたほうがよいかもしれません。
(以下続く)