契約書知識 16 契約書の表記は公用文表記法による
最近見た契約書の中の間違った用語の例ですが,「譲渡税」という言葉が書かれていました。
いうまでもなく,「譲渡税」という税はありません。
文面を読んでいくと,「不動産の譲渡によって発生する譲渡所得にかかる所得税」のことを「譲渡税」と表示していることが理解できましたが,そうならば,少なくとも「譲渡所得にかかる所得税」と書くべきでした。
「譲渡税」と書くと,人によって,また,立場によって,その言葉を「不動産の譲渡に伴って生ずる税金」と曲解し,譲渡所得にかかる所得税のみならず,不動産取得税まで含めてしまう危険が生ずるからです。
言葉は,一義的に明確な言葉を使わなければなりませんので,契約書に書く用語は,いちいち面倒でも,六法全書をひもとき,法令用語を正確に使えているかを確認しながら用いるべきでしょう。
因みに,譲渡所得税という言葉を使う人が結構多くいますが,「譲渡所得税」という税もありません。
不動産の譲渡所得は,分離課税になっていて,計算も簡単にできますので,「譲渡所得税」と書いても,他の税金が混入する余地はなく,分かりやすい言葉ではあるのですが,それでも正しい表示とはいえません。
正しくは,譲渡所得に課せられる所得税という表示になります。