民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲
Q 当社は,残業代の請求をしてきた元従業員との間で,和解金解決金として100万円を支払う裁判上の和解をしました。
①その和解金の支払時に源泉徴収をしなければならないのですか?
➁源泉徴収義務がある場合に,元従業員との間で,元従業員が確定申告をして所得税を納付するという合意を結べば,源泉徴収をしなくともよいのですか?
A
1,和解により支払う解決金の所得区分は,その名目にかかわらず,実態に即した課税がなされます(東京高裁平成16.5.11判決)。
あなたの会社の場合,支払うことになっている解決金が,
(1)給与・賞与などの性質を有する場合は,本来支給されるべきであった日の給与所得とされます(所得税法28条,所得税法基本通達36―9)ので,その支払いの際,所得税を源泉徴収し,これを翌月10日までに国に納付しなければなりません。残業手当は,給与の含まれますので,源泉徴収義務があります。
(2)和解金の中に遅延損害金が含まれている場合は,遅延損害金は雑所得とされていますので,元従業員には所得税の対象になりますが,貴社には源泉徴収義務はありません。
(3)和解金の中に,付加金(労働基準法114条)が含まれている場合は,付加金は,労働の対価ではないため,給与所得にはならず,一時所得になります。一時所得は,元従業員には所得税の対象になりますが,貴社には源泉徴収義務はありません。
2,源泉徴収義務は,給与の支払義務者の国に対する法律上の義務ですから,給与を受ける者(あなたの場合,和解した元従業員)との間で,源泉徴収をしなという約束をしても無効です