契約書 第三者のためにする不動産売買契約
1,供給義務条項
(供給義務)
第○条 甲は,本件商品につき毎月それぞれ別紙2に記載する数量の供給義務を負う。甲は,乙からの注文に対し本条で定める義務を履行することができるよう,十分な在庫を確保しなければならない。
2,出荷停止条項例
(担保の請求・出荷停止)
第○○条
甲が乙の倒産のうわさを聞いたとき、乙の注文量が合理的に説明できない量に増えたとき、その他乙の弁済能力に疑問や不安が生じたときは、甲は乙に対し、過去甲から仕入れた商品の販売先等を含む取引の詳細が分かる会計帳簿、直近の財務諸表(試算表)や今後の資金繰り表など乙の財務状態、信用状態を示す資料の提出、および乙が弁済期に弁済をなしうる理由の説明を求めることができる。
2 前項の資料や説明によっても甲の不安が解消しないときは、甲は乙に対し、甲の乙に対するその後の取引については現金と引き替えで支払うこと、又は、当該債権を担保できる抵当権等物的担保の提供又は甲が資力があると認める者の連帯保証を請求することができる。
3 乙が、前項の甲の請求に応じないときは、甲は、乙に対する出荷を一時停止することができる。
2,解説
不安の抗弁権
買主に、解除条項に該当する事由が生ずれば、売主は、契約の解除をすることが出来ますが、それらがない場合でも、売主に買主が倒産するのではないかと不安に思うような状況が生じたとき、売主から出荷の停止や契約の解除が認められる場合があります。それは「不安の抗弁権」といわれるものです。
裁判例によれば、不安の抗弁権は、① 取引の相手方に対し、相手方の信用に不安が生じたことを、具体的な事実を指摘して伝えて、相手方に、約束の弁済期日に売掛金が支払えることの具体的な理由の説明を求め、相手方の説明でも信用不安が残る場合には、②相手方に担保や保証人の提供を求め、それに応じてくれないときは、③出荷の停止や契約の解除をすることができる。というものです。
判例及び裁判例紹介
・出荷停止を認めた判例
最高裁昭和37.12.13判決は,「 本件のような継続的供給契約は、契約の性質に鑑み、当事者双互の信頼関係に基づいて成立するものであり、かつ実行されるべきものであるから、取引の実行に当つては、互に相手方の信頼を裏切らないことが要請されるところ、上告会社は、たとえ代金の支払方法として自己振出の約束手形を交付する約定であつたにもせよ、期日に不渡となる危険が予想されるような、また、手形本来の経済的作用である流通性や換金性に乏しいため支払方法として使用するに適しないような、取引関係のない銀行を支払場所とする約束手形を振出し、交付し、あまつさえ上告会社の代金支払能力に不安を抱いた被上告会社から、再三、割引容易な手形とそれとの交換または現金払いの交渉を受けながら、これを回避して、誠実を以て右交渉に応じる態度を示さなかつた点・・・右の如き不信性は、決して所論の如く些細なことではないのであるから、・・・右の如き上告会社の不信行為を理由とし、かかる場合、被上告会社は適法に爾後の納品を拒否し得る旨の判断をしたのは、必ずしも妥当を欠くものということはできない。」と判示。
・出荷停止を認めなかった裁判例
大阪地裁平成5.6.21判決は
①継続的供給契約関係の下では,買主に信用不安等の事情がある場合には、売主は,その発注に対して承諾を拒絶することが許される。
➁しかし,売主は,買主に支払遅延、支払停止等の代金回収についての信用不安があるか、あるいは信頼関係を破壊するような特段の事情がある場合でない限り、出荷停止をしてはならない義務を負っている。
と判示して,買主からの商品(ジーンズ)の仮の引渡の仮処分の申請を認めました。