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民法雑学 国会や地方公共団体議会の議事録と,農協理事会の議事録との違い

菊池捷男

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テーマ:民法雑学

Q 国会や地方公共団体議会の議事録には,発言者の発言内容の全部が書かれていますが,農業協同組合の理事会の場合は,そこまでは必要はないということですか?

A そうなります。
 議事録は,議題について審議された記録のことです。
 議事録を作る目的は,その会議体ごとに異なります。
 議事録は,その会議体の目的に合致するように書くべきです。
 国会や地方議会での審議は,結論もさることながら,審議過程の個々の議員の発言は,選挙民にとっては重要なものですので,その発言内容は,原則として全部,記録し,公表しなければならないことになっています。
 議会の議事録だけでなく,専門家や有識者に意見を求める審議会などの議事録は,発言者の氏名を明示して,その語った内容をそのまま記録に残す必要がある場合もあるでしょう。それは結論よりも,論議の過程が重要だからです。

 しかし,一方で,会議体によっては,議事録は,結論が分かればよい,というものもあるでしょう。
 例えば,町内会で夏祭りをするかどうか?その費用として,町内会からいくらお金を支出するか?を決めるための町内会の会議のような場合です。
 この場合の議事録には,参加者個々の発言内容を議事録に留める実益はないでしょう。

 ところで,農業協同組合の理事会の議事録についてですが,
そこに書くべきことは,法律上は,「理事会の議事の経過の要領及び結果」 です。
通常は,
1 議題と議案(その違いは,山陽新聞社発行:拙著「知って得する法令用語」参照)
2 議題ごとの審議の要旨(例:①議案の上程。➁議案に対する質疑。議案に対する賛成又は反対の意見。議事進行に関する動議又は議案の修正動議。動議の内容と採否。修正議案に対する質疑や意見など)
3 結論(例:原案承認又は否決。修正案の採否。場合によっては付帯決議)
などを,議事録に書くことになるでしょう。
 これらを詳しく書くか,簡潔に書くかは,内容の重要度によって違ってくるのは当然です。
 理事全員が,原案承認で一致するような議題については,審議過程を省略して,「全員一致で可決承認」とだけを書くことも許されるでしょう。
 逆に,賛否両論が鋭く対立した議題については,賛成及び反対意見の論拠や数を,また,個々の理事の意見を,理事の氏名を明らかにして又は明らかにしないで,を書く必要が生ずることもあるでしょう。
それらは,ケースバイケースというべきでしょう。

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