不動産 中間省略登記ができない理由
Q
私は賃貸用ビルを,前の所有者から,購入し,新たに,賃貸事業を始めようとしている者です。
したがって,テナントから見ると,私は,オーナーチェンジによる新オーナーになります。
この場合で,前の所有者時代に,前の所有者が,債権者から賃料債権の差押えを受けているときは,新しいオーナーは,賃料を受け取ることはできない,ということを耳にしたのですが,事実ですか?
A
事実です。
最高裁判所平成10.3.24判決は,「建物所有者の債権者が賃料債権を差し押さえ、その効力が発生した後に、右所有者が建物を他に譲渡し賃貸人の地位が譲受人に移転した場合には、右譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができないと解すべきである。けだし、建物の所有者を債務者とする賃料債権の差押えにより右所有者の建物自体の処分は妨げられないけれども、右差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、建物所有者が将来収受すべき賃料に及んでいるから(民事執行法151条)、右建物を譲渡する行為は、賃料債権の帰属の変更を伴う限りにおいて、将来における賃料債権の処分を禁止する差押えの効力に抵触するというべきだからである。」と判示しているからです。
参照
民事執行法151条
「給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。」
ですから,経済的に苦しい人や会社から,賃貸用不動産を購入する場合は,賃料債権が第三者(債権者)から差し押さえられていないことを確認しないと,大きな損害を受けるリスクがあるのです。
注意すべきことです。