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新耐震基準と借地契約の解消

菊池捷男

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テーマ:不動産法(賃貸借編)

Q 当社A社が貸主になり,今から50年近く前,B社に当社の土地の一部を貸し,B社が建物を建てて使用していますが,まもなく借地契約の期間が満了することになっています。当社が所有している土地上に建てた建物も,B社が借地上に建てた建物も築40年以上経過し老朽化していますが,当社は自社の建物が新耐震基準に適合していないので,建て替えたいと思っています。それには,隣地であるB社に貸した土地の返還を受け,同土地に当社が新たな施設を建築し,建替えを必要とする施設の一部の機能を移転させ,当該機能を移転させた施設を取り壊し,その跡地に新たな施設を建築し,その施設に他の施設の機能の一部を移転させるというサイクルを繰り返すスクラップ・アンド・ビルド方式による建て替えの必要がありますので,B社に貸した土地の借地契約の更新を拒絶したいのですが,できますか?

A 東京地方裁判所平成平成25年1月25日判決は,それを認めた事例です。
1,この事件の原告は,学校法人某医科歯科大学です。
2,被告は,原告から借地し,その上に建物を建てて,うどん屋を経営している個人です。。
3,裁判所は,次の理由で,借地契約の期間満了による更新を拒絶することを認めました。
(1)原告が本件土地を必要としていること
 原告が使用している土地は,大学及び病院として必要とする建物を建築して使用しているが,これたの建物は,新耐震基準施行前に建築されたものなど,耐震性に問題がある老朽化建物が多く,スクラップ・アンド・ビルド方式による建物の建替の必要があること,
 とくに,原告は大学病院を経営し極めて公共性の高い使命を担っているところ,耐震性の確保は人命に関わる喫緊の課題といえることを考えると,建替は,公益にも適うものというべきであること。
(2)原告は,被告に対し,裁判所の鑑定に基づいて定められる本件土地の借地権評価相当額の給付を申し出ること。

4,結論
 ですから,新耐震基準に適合しない建物の建て替えは,必要であり,そのために借地の返還を求める必要がある場合は,正当な借地権価格を支払うことで,借地契約の更新拒絶はできるというべきでしょう。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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