契約書知識 16 契約書の表記は公用文表記法による
1,契約書のない契約
契約書を取り交わさないで,注文を受け,契約を結び(口頭による),契約を履行するということはよくあります。
この場合,契約の内容及びその履行の有無,程度をめぐって争いになることが多く,解決までに時間がかかるます。そして,多くの場合,金銭の請求をする側が不利益を受けることになります。
2,事実を証拠で語らせる
債権の有無,内容について,争いが生じた場合,自己に有利な事実を認めてもらいたければ,証拠が必要です。契約の内容,契約を履行したこと,などの事実は,証拠で語らせなければなりません。
3,契約書のがない場合の証拠
(1)注文書,注文請書
例えば,甲が乙に対し,工作物の製造及び設置を依頼するため,注文書(仕事の内容,仕事の単価,契約金額が細かく書かかれていることが望ましい)を発送し,乙から甲への注文請書(仕事の内容につき補足的に説明を加えることが望ましい)を返送すれば,契約の成立の証明に役立ちます。
証拠としての価値は,自分の方で作った書類ではなく,相手方の作った書類にある,ということを念頭に置き,できるだけ相手方から書類をもらうよう心がけるべきです。
(2)見積書・仕様書
乙が,見積書(仕様書を同時に作成すると仕事の内容がより明確になります)を送った後で,甲から発注書が発送された場合は,見積書に書かれた金額で契約が成立したとされる可能性が大きくなります。
(3)契約内容の変更があったときの,見積書・仕様書
契約の内容の変更(仕事内容の増減,材料の変更,仕様の変更,たんに代金のみの変更な
ど)は,しばしば起こることですので,契約の変更の都度,見積書や仕様書の授受をしておくべきです。
(4)メール・ファックス
契約の成立前に,材料や仕様についての意見交換,単価や契約金額についての値決め交渉がなされている場合があります。契約成立後も,契約内容(仕事の内容)の変更についての申し入れや打合せがありますが,これらは,電話など記録に残らない方法ではなく,メールやファックスでするべきです。メールやファックスのやりとりは,契約内容の立証に役立ちます。
(5) 議事録
これは相手方から書類がもらえない場合に,有力な証拠になります。
交渉の都度,交渉内容と結果を,議事録に書き残しておくのです。これに,打合せや交渉に来た相手方の従業員にサインでもしてもらえば,証明力は十分でしょう。