賃借人が賃借建物内で死亡していたとき
昨日のコラム(市街化区域内の農地は,宅地並課税により固定資産税が高くなっているのに小作料への転嫁が認められないが,地主から適正な離作料を支払うことで小作契約が解約できること)の続きです。
1,適正な離作料の基準
平成元年12月22日の東京地裁判決は,「離作補償は、農地賃貸借の終了によつて賃借人が被る農業経営及び生計費の打撃を緩和する趣旨で、賃貸人が自発的に支払うものであるから、知事が農地の賃貸借契約解約申入れの条件として、離作補償の支払を命じる場合には、その金額は農地賃貸借の終了によつて賃借人が被る農業経営及び生計費の打撃を回復するに足りるものであれば良く、右範囲であれば具体的な金額の算定は、知事の裁量に委ねられていると解すべきである。」と一般論を判示した後,その地域における農地の年間粗収益の試算額(前提の小作料は標準額),その地域における農業委員会の農地売買価格調査結果に基づく同市内の市街化調整区域における耕作目的の農地の価格(問題になっている農地に相当する面積の農地の再取得に必要な価格),小作人の農業収入額,小作人が農地から離作しこれを賃貸人らに返還したときの経済状態への影響を総合考慮して,地主から提示された離作料は,小作人の離作に伴う損失を十分に補償されるので,それを条件としてした知事の小作契約の解約の許可は違法では無いと判断しました。