新しい契約書案 改正民法に合わせて①「瑕疵」という言葉は使わない
1,一義的に明確,というだけでなく,内容を十分に盛り込んだ用語の必要性
契約書は,簡潔で,必要な内容を明確に意味する言葉で書かなければなりません。そのためには,そこに書かれる言葉は,①意味内容が客観的かつ一義的に明確というだけでは足らず,②契約の目的を達成するだけの意味内容を盛り込んだ言葉でなければなりません。前者の要請を満たすには,法令用語や一般用語を正しく使うことで可能ですが,後者の要請を満たすには,定義規定を置かなければなりません。
2,秘密保持条項の例
営業に関する契約書には,不正競争防止法にいう営業秘密の範囲を超えて,秘密の概念(言葉)を作り,その遵守を約束することが多く,そのために定義規定を置くのが一般的です。
例えば,
第○○条 本契約において「秘密情報」とは,甲が乙に業務を委託することにより乙の知り得る甲の取引先等の事業情報,技術情報及び個人情報その他一切の情報をいう。ただし,甲が特に秘密情報とすることを要しない旨を開示時又は開示後に書面で指定したものを除く。
2 本契約において,以下のいずれかに該当する情報は,秘密情報に該当しないものとする。
(1)既に公知又は一般に入手可能であった情報。
(2)甲の行為によらずに公知又は一般に入手可能になった情報。
(3)既に自己が所有又は秘密情報を用いずに甲が独自に開発したことを証明し得る情報。
(4)第三者から秘密保持義務を課されることなく正当に入手した情報。
3,請負契約や業務委託契約における目的物の特定
請負契約は「完成」したかどうかが争いになることが多く,業務委託契約も委託どおり業務をしたかどうかが争いになることが多くあります。
この場合,何ももって「完成」というのか,どの程度の仕事をして「業務」をしたというのかを明確に約束していないと,注文主や委託者は泣きを見なければならなくなります。
「仕事の完成」の意味を,設計図や仕様書を添付した上で,さらに契約目的を具体的にした上で,それを満足させる程度の完成度を明確に書いておくべきです。業務ついても同じです。
例えば,「本件製品とは,別紙仕様書①による材料を用い,同②の製造工程を経たもので,かつ,甲の顧客が高級品であると認識できる程度のものをいう。」などが考えられます。