コラム
相続相談 登記 相続人への「遺贈」は「相続」登記が可能か?
2013年10月30日 公開 / 2014年1月27日更新
不動産につき、「遺贈」を原因として所有権移転登記(遺贈登記)をする場合の登録免許税は、不動産の価額の1000の25であるのに対し、「相続」を原因とする所有権移転登記(相続登記)であれば、1000分の6になります。
ここに、遺言者が、「遺言者はその所有に属する遺産全部を包括して遺言者の長男甲に遺贈する。」との遺言書を残して亡くなりました。
この場合、甲は、この遺言によって取得した不動産につき、登録免許税が高くなる遺贈登記ではなく、登録免許税が安くなる相続登記にすることは許されるでしょうか?
2 許されないとの法務局判断
仙台地方裁判所平成9.8.28判決の事案では、法務局はこのような相続登記の申請は違法であるとして、登記の申請を却下しました。
遺言書に「遺贈」と書いている以上、「相続」登記はできないという判断です。
3 許されるとした判決例
同判決は、遺言の解釈にあたっては、文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものである。この件の遺言者は、全財産を長男甲に取得させるために、「包括して遺贈する」という言葉を使っただけであり、遺贈と相続の違いについて特別認識していたわけではない。遺贈登記と相続登記によって登録免許税の額に差異が生ずるとするならば、遺言書の文言如何にかかわりなく、相続人たる甲に有利な方法を選択したものと推認することができる。したがって、遺言者の真意は、「包括して遺贈する」というものではなく「相続させる」というものである。したがって、法務局が、相続登記の申請を却下した行為は違法であるので、取り消す、と判示しました。
4 許されないとの高裁判決
前記3の判決の控訴審判決(仙台高裁平成10.1.22判決)は,遺言の解釈に当たっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨(遺言者の真意)を探求すべきものではあるが、遺言という意思表示の解釈問題である以上、まず重視すべきは遺言書の文言であることはいうまでもなく,この件の遺言の文言上は包括遺贈であることが一義的に明らかであり、疑問を容れる余地はない上,弁護士が関与した上作成している等の事情から,「相続」ではなく「遺贈」と解するべきである,と判示しました。
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