民法雑学 コピー1枚500円は違法
1,質問
大学生のA子さんが、夏休みを利用して、B航空の飛行機で、パリへ旅行に行くことになりました。その航空会社へ、A子さんの父親から、娘がロンドンに到着する時刻の問い合わせがありましたが、航空会社では、その時刻を、A子さんの父親に教えることはできるでしょうか?
2,答
教えることはできません。
3,個人情報
個人情報保護法2条1項は、個人情報の定義を、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいう。」と定めています。
これにより、個人情報とは、「特定できる個人(死者を除く)に関する情報のすべてであることが分かります。ですから、A子さんが、ロンドンに到着するという情報も、個人情報になるのです。
4,第三者への開示が禁止されるのは、個人情報ではなく、個人データ
個人情報保護法23条は、「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」と規定しています。同法は、個人情報の第三者提供を禁止しているのではなく、 個人データの第三者提供を禁じているのですが、
では、個人データとは何かというと、①コンピューターを利用して検索が可能な個人情報 又は ②病院のカルテのような紙媒体に書かれたものではあるが、検索が容易にできるように体系的に構成された個人情報をいいます(個人情報保護法2条2項、4項)。
ですから、A子さんが乗る飛行機やその飛行機がロンドンに到着する時刻は、航空会社ではコンピューターによって検索できるようにしているはずですので、それは個人データになるのです。
5,個人データを本人の同意なしには第三者に提供できないという場合の第三者の範囲
第三者とは、本人以外のすべてですので、家族も第三者になります。
消費者庁担当課は、第三者が家族であっても、個人情報を提供することは原則として許されない、現代においては携帯電話も普及している以上、本人との連絡を取ってもらうことで容易に情報を知ることができるのだから、会社としては教える合理的な理由もない、と考えているようです。
6, 個人情報保護法違反の場合の責任
① 勧告・命令
個人情報保護法23条に違反した場合、個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、主務大臣(貴社の場合は通商産業大臣)から事業者に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができます(同法34条1項)。
また、勧告を受けた個人情報取扱事業者が正当な理由亡くその勧告に係る措置を執らなかった場合で、緊急性があるときは、大臣は事業者に対し、命令を発することができます(同条2項)。
さらに上記命令に違反した場合には、6月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が定められています(同法56条)。
② 損害賠償請求
個人情報保護法23条違反及び貴社と顧客の間に締結された規約違反により,本人に何らかの損害が発生した場合には、貴社は本人に対し、不法行為として損害賠償責任を負うこととなります(民法709条)。