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商取引 6 売掛金の回収方法① 動産売買の先取特権

2013年6月8日 公開 / 2013年6月11日更新

テーマ:商取引

コラムカテゴリ:法律関連

1 動産売買の先取特権
 商品や原材料等の動産について、売買契約が結ばれ、売主から買主に対し、商品等は引き渡されたが、その代金の支払いを受ける前に、買主が倒産するというようなケースは決して稀ではありません。
このような場合、売主には、その動産に対し、他の債権者に優先して、弁済を受けうる権利が認められています。それは、「動産売買の先取特権」といわれ、法律(民法311条)が認めてくれた担保権であることから、「法定担保権」と言われます。ですから、仮に、買主について破産手続が開始した場合であっても、この権利は行使できます。

 その先取特権の権利行使方法は、民事執行法190条1項および2項により、売掛債権があることを証する書面を裁判所に提出して、売買物件に対し動産競売の許可決定をもらい、それを執行官に渡して差押えをしてもらうという方法をとらなければなりません。

2 動産売買の先取特権に基づく物上代位
 なお、買主が買い受けた動産を、すでに他に売却などをしていた場合は、売主は、その動産を差押えはできなくなりますが、買主がその動産についての転売代金の支払いを受けていないときは、売主は、その転売代金債権を差し押さえることができます。これを「動産売買の先取特権に基づく物上代位」といいます。
 この権利は、動産売買の先取特権の形を変えた権利ですので、仮に買主が破産になっても、破産管財人に対し、優先権を主張できます(最高裁昭和59.2.2判決)。

3 自社が売った商品の引き上げ行為
 このような行為は買主が倒産した場合に、しばしば見られる現象ですが、売主が、買主の同意を得て、動産売買の先取特権の対象となる動産を引き上げた場合は、仮に、買主につき破産手続が開始されたとしても、否認されることはないとされていますが、買主の同意無くして、引き上げた場合は、そのような保護を受けることは出来ず、場合によっては、窃盗などの不法行為を構成することもあるとされています。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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