相続と登記 9 遺留分減殺請求と登記
1相続開始前3年以内の贈与は、贈与を否定
被相続人が亡くなった日(相続開始の日)から3年以内になされた贈与は、贈与税を納付していた場合でも、相続税の計算の上では、贈与がなかったものとされています。したがって、この贈与は、相続税の課税対象の遺産に含められると同時に、すでに納付した贈与税は還付されることになります。
本連載コラム「相続税のお話し 5 相続税の計算」で、相続税の計算過程を説明しましたが、その「Step 1 各相続人等(相続人・受遺者)の課税価格の計算」の イ) のところで、課税価格の計算式として「純資産価額 + 相続開始前3年以内の贈与財産の価額」をあげたこと、また、「Step 4 各人の納付税額の計算」の、「各相続人、受遺者の納税額計算」のところで、「相続開始3年以内の贈与で納付した贈与税額」を差し引いたのは、そのためです。
2例外 ―居住用不動産の贈与の特例
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産又はそれを取得するための資金を贈与したときは、最高2000万円までは贈与税が課されないことになっています。これは、「贈与税の配偶者控除の特例」といわれますが、この特例の適用を受ける贈与は、相続開始前3年以内の贈与であっても、贈与の効果が認められますので、被相続人が亡くなる直前であっても、この贈与によって、遺産の減少、したがって相続人の節減をすることが可能になります。
なお、この特例の適用を受ける要件は、
①婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与であること
②贈与の対象になるのが、居住用の不動産又は居住用不動産を購入するための金銭であること
③贈与された年の翌年の3月15日までに、贈与された居住用不動産又は贈与された金銭で取得した居住用不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること
④同じ配偶者から過去にこの特例の適用を受けた居住用の不動産又は居住用不動産を購入するための金銭の贈与を受けたことのないこと
⑤この特例の適用を受ける贈与税の申告をすること
です。