コラム
相続税のお話し 10 節税策としてのマンション購入に潜むリスク
2013年5月30日
1うたい文句
現金2500万円を残して相続が開始すれば、課税遺産額は2500万円のままであるが、その2500万円をもって、賃貸マンション1室を購入すれば、その評価額は865万円でしかなく、課税価格にして1635万円も少なくなり、それに適用される税率分が節税になる、といううたい文句で、賃貸マンションの販売に力を入れているディベロッパーがいます。
2 価格が低くなる理由
この業者は、マンションを2500万円で売りに出していますが、その内訳は、建物が1000万円、土地(敷地権=土地共有持分)1500万円ということにしていました。
すなわち、販売価格は、
土地 1000万円
建物 1500万円
合計 2500万円
です、
しかしながら、
相続税の課税価格は、
土地 340万円
建物 525万円
合計 865万円
になる、
というのです。
その計算根拠は、次のとおりです。
⑴ 土地の相続税課税価格は340万円という根拠
業者のうたい文句によれば、土地は、販売価格としては1000万円に設定したが、相続税評価額である路線価はその8割程度である上、賃貸建物の敷地の場合そこから借地権割合に借家権割合を乗じた金額を控除することができるが、その地域では借地権割合は5割、借家権割合は3割になるので、0.5×0.3が路線価より減じられ、その上、その土地については、事業用小規模宅地の評価減が5割可能であることから、
相続税の課税価格は、1000万円×0.8×(1-1×0.5×0.3)×0.5=340万円になる、というものでした。
⑵建物の相続税課税価格は525万円という根拠
そして、建物については、固定資産評価額(相続税評価額も同じ)は、時価の5割程度である上、貸家としての評価減(1-0.3)がなされるため、建物の評価額は、1500万円×0.5×(1-0.3)=525万円になる、というものでした。
3はたして、下がるのは、評価額だけなのか?
この業者は、この販売用マンション1室の経済価値が2500万円であることを前提に、相続税の課税価格と建物の課税価格が大きく減じられるというのですが、はたして、そのマンションの時価が、2500万円であり続けるのかどうかは、考える必要があります。
今から20年前に2500万円の賃貸用マンション1室を購入した公務員の方が、先日そのマンションを売ったのですが、その価格は300万円でしかなかった、ということでした。
評価額が下がるということは、時価も下がる、という面もあることをお忘れなく。
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