コラム
相続税のお話し 6 全財産を妻に相続させる、という遺言に潜む相続税の過大負担
2013年5月20日 公開 / 2013年5月23日更新
例えば、夫が、全財産を、愛する妻に残してやろうと考え、「私の財産は全部、愛する妻に、相続させる。」という遺言書を残したとした場合、その財産が、基礎控除額や、配偶者控除額を計算に入れると、妻には1円も相続税がかからない、という場合は、相続税上の問題はありません(ただ、遺留分減殺請求などの紛争が生ずる可能性がある、という点では問題は残りますが。)。
しかしながら、それらの控除額を考えても、なお、妻に相続税がかかる場合、夫が、妻に全財産を遺贈することが良いことかどうかは、考えておく必要があります。
それは、夫から妻に遺贈された財産は、やがて、妻から子に相続されるからです。
夫から、妻に、遺贈されたときに、相続税がかかった財産が、妻から子に相続又は遺贈されたときに、また、相続税がかかるからです。
もっとも、その場合、夫が亡くなって妻が亡くなるまで10年が経過していないときは、年数によって変わる計算式に従って、子には、相次相続控除として、一定の税額控除が認められますが、妻にかかった相続税全額が控除されるというものではないので、やはり、夫の残した財産が、最終的には子の所有になるのであれば、
夫 → 妻 → 子 へ、という経路ではなく、
夫 → 子 へ、直接移転する経路の方が、相続税の負担という点では優れています。
資産を多くお持ちの方で、愛する妻には、最大のことをしたい、とお思いの方は、配偶者控除の範囲内での遺産の相続や遺贈は、相続税がかからないので、10億円の資産のある方は少なくとも5億円は奥様に相続させ、2~3憶程度の遺産を遺される方も、1憶6000万円までは、奥様に相続させても相続税はかからないので、そうしてあげるべきでしょう。
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