地方自治 概算払と前金払の違い
地方自治体議員の2親等親族経営会社に関する倫理条例問題
1事件
広島県府中市は、府中市議会議員政治倫理条例があり、そこには、市議会議員の2親等以内の親族が経営する企業は市が発注する工事の契約を辞退しなければならず、当該議員は当該企業の辞退届を提出するように努めなければならない旨が規定されているが、甲という議員がこれに該当しながら、兄が経営する企業が辞退届を提出せず、また議員も親族経営企業に辞退届をするよう働きかけなかったことで、府中市議会が甲に対し、議会議員辞職勧告決議を行いました。
これに対し、甲は、府中市に対し、府中市議会議員政治倫理条例は違憲、無効な条例であるとして、同条例違反を理由として同市議会が辞職勧告決議を行ったこと等は不法行為にあたるとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償等を求めました。
2 一審の広島地裁平成22年11月9日判決
府中市議会の条例は、
①議会運営の公正、事務執行の適正が害される危険性が類型的に高いと考えられる企業に絞って、市との請負契約等の締結を辞退するよう義務づけているにすぎないこと、
②また、右企業と関連する議員に対しては、辞退届を提出する努力義務を課すにとどめていること、
③その違反に対しても、警告措置や辞職勧告等といった事実上の措置が講じられる可能性があるにすぎないこと、
④右条例は地方自治法と比べて著しく広汎かつ強力な規制を行っているとは認められないこと
を理由に本条例は適法であるとし、甲の請求を棄却しました。
3 広島高裁平成23年10月28日判決
①本件倫理条例の「2親等規制」は,憲法上保障された経済活動の自由及び議員活動の自由を制限できる合理性や必要性が認められず,無効である。
②ただし、本件倫理条例(4条)の2親等規制を議員が実質的に経営する企業と契約した場合に限定解釈すれば,その規制の合理性・必要性を肯定する余地はある。
③しかし、府中市は、本件倫理条例4条についてそのような限定解釈をすることなく,甲に適用しているし,また,甲が府中市と本件請負契約を締結したA産業を実質的に経営していると認められないから,本件倫理条例4条を甲に適用することはできない。
④甲に対する政治倫理審査会での審査の過程において,憲法に違反して無効である旨の主張があったから,本件倫理条例4条違反の手続に関与する府中市議会の議員は,審査会の手続を進めるに当たり,本件倫理条例4条の2親等規定が憲法に適合するか否か調査検討する義務があったにもかかわらず,これを十分に検討することなく,その手続を進めて甲に本件倫理条例4条違反があるとの措置をとった過失があると認めるのが相当である。
⑤甲の精神的苦痛を慰謝する金額は,30万円をもって相当と認める。そして,被控訴人の負担すべき上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は3万円が相当である。