建築 2 市長が結んだ建築請負仮契約の法的性質等
最高裁平成5.10.19判決は、下請が一括下請の場合で、注文主が一括下請のあったことを知らなかったときについて、
⑴ 注文者と元請負人との間に、契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合に、当該契約が中途で解除されたときは、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、当該出来形部分の所有権は注文者に帰属する。
⑵ その理由は、建物建築工事を元請負人から一括下請負の形で請け負う下請契約は、その性質上元請契約の存在及び内容を前提とし、元請負人の債務を履行することを目的とするものであるから、下請負人は、注文者との関係では、元請負人のいわば履行補助者的立場に立つものにすぎず、注文者のためにする建物建築工事に関して、元請負人と異なる権利関係を主張し得る立場にはないからである。
なお、⑵については、この最高裁判決の補足意見の中で、
注文者たる甲、元請負人乙、乙から一括下請負をした丙の三者の関係は、比喩的にいえば、元請契約は親亀であり、下請契約は親亀の背に乗る子亀である。乙と丙の間の一括下請契約の締結が甲の関与しないものである限り、丙は右契約上の権利をもって甲に直接対抗することはできない(下請契約上の乙、丙の権利義務関係は、注文者甲に対する関係においては、請負人側の内部的事情にすぎない)、と判示しているところです。