建築 2 市長が結んだ建築請負仮契約の法的性質等
東京高裁昭和58.7.28判決は、その後、最高裁平成5.10.19判決の補足意見で引用されるほどのリーディングケースになった判決ですが、
この判決は、
⑴ 請負人が自ら材料を調達、供給して建物を完成した場合には、建物所有権は請負人に帰属し、下請負人が自ら材料を調達、供給して建物を完成した場合には、下請人に帰属する。
⑵ 注文者が元請人を通じて右建物所有権を取得するためには、下請人から元請人、更に元請人から注文者への所有権の移転がなされなければならない。
⑶ 下請人から元請人への建物の引渡し、所有権の移転もない場合は、特階の事情のない限り、注文主が請負人から所有権移転の趣旨で建物の引渡しを受けても、その所有権を取得することが出来ず、所有権は、なお下請人に留っている。
⑷ しかしながら、下請人は、建物の所有者と言っても、その敷地の使用権があるわけではなく、建物を独立した財産として使用したり、取引の対象にできるものでもなく、その権利は、実質的、機能的には、下請工事代金債権確保のため意義を有するに過ぎない特殊なものというほかない。
⑸ また、下請人は元請人の経済状態等を知り易く、下請工事代金債権の確保に関しても、完成した建物について速かに自ら建物保存登記をするとか建物の保管を厳重にする等の方策が採れなくはない。
⑹ したがって、一括下請禁止の特約があり、注文者が元請のみと折衝して工事を進めてきている場合にで、注文者が元負人に代金を完済し、元請人から平隠に建物の引渡しを受け、登記までも経ながら、なお元請人と下請人との関係如何によって、下請人の建物所有権ないし占有権に妨げられ、二重に代金を支払わなければ目的を達成出来ないということは、注文者にとってあまりにも苛酷である。したがって、このような場合は特段の事情を認め、下請人は、建物の所有権を主張できない。
と判示しました。