使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
電通事件最判平12.3.24は、入社2年目の社員が長時間労働のためにうつ病になり自殺した事件で、使用者の安全配慮義務違反を認めました。なお、この件の原審は自殺した社員のうつ病親和性(うつ病になりやすい心因的要因あるいは体質)を考慮し、過失相殺の類推(一種の素因減額)により30%を損害賠償額から減額しましたが、最判はこれを破棄し、使用者は、労働者の性格の多様性を考慮して、配置先や業務の内容を定めうるので、労働者の心因的要因を斟酌することはできない(素因減額はできない)と判示し、事件を原審に破棄差し戻しをしました。破棄差し戻し後、原審高裁では1億6800万円で和解が成立しています。
これが契機に、厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」(平成23.12.26最新版)が策定されると同時に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平11.9.14 基発544号)及びセクハラに関する通達・パワハラに関する通達は廃止されました。
ですから、現在は、「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」(平成23.12.26)によって、心疾患が判断されることになっています。
なお、【心理的負荷による精神障害の労災認定基準(平成23.12.26)の特徴】は、
①分かりやすい心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)を定めた。
②いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として心理的負荷を評価することにした。
③これまですべての事案について必要としていた精神科医の合議による判定を、判断が難しい事案のみに限定した、ことです。
また、その【認定要件】は、
①対象となる疾病(器質性のものおよび有害物質に起因するものを除く精神障害で、いわゆる心身症は含まれない)が、発病していること
②発病前おおむね6カ月の間に業務による強い心理的負荷が認められること
業務以外の心理的負荷及び個体側要因により発病したとは認められないこと、です。