コラム
相続と登記 11 遺言により相続分の指定を受けた場合、そのことを登記していなくとも、第三者には対抗できる
2012年9月10日
Q 父は、私の相続分を3/4、弟の相続分を1/4とする遺言書を書いて亡くなりました。しかし、弟は、父の残した不動産につき、私の法定相続分.1/2、弟の法定相続分1/2の共有登記をし、弟の持分1/2を第三者に売ってその登記をしました。私は、その第三者にその不動産の3/4は私の所有であると主張できますか?
A できます。遺言で相続分の指定を受け、その相続分が法定相続分未満である場合は、仮に、法定相続分で登記を受けていたとしても、指定相続分を超える部分は無権利の登記になりますが、登記の公信力はないので、指定相続分を超える部分を第三者が取得することはできないのです(最判平5.7.19)。ですから、弟さんの指定相続分は1/4ですので、仮に法定相続分1/2で登記されていたとしても、1/4を超える部分は、権利として取得できないのです。
【判例】最判平5.7.19
原審の適法に確定した事実関係によれば,⑴被相続人の死亡により甲乙丙丁の4名が本件土地を共同相続し、被相続人が遺言で各相続人の相続分を指定していたため、甲の相続分は13/80であった、⑵甲は、本件土地につき各相続人の持分を法定相続分である1/4とする相続登記が経由されていることを利用し、甲名義の1/4の持分を上告人に譲渡し、上告人は右持分の移転登記を経由した、というのである。
右の事実関係の下においては、甲の登記は持分13/80を超える部分については無権利の登記であり、登記に公信力がない結果、上告人が取得した持分は13/80にとどまるというべきである。
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