コラム
相続相談 42 相続分の譲渡と不動産取得税
2012年8月22日
Q 昨年父が遺言書を書かないで亡くなりました。相続人は、母と兄弟姉妹が5人います。遺産分割協議がもめてきましたので、私は自分の相続分を兄に譲渡することにし、父が残してくれたA宅地について、全相続人の法定相続分による相続登記手続をしました。そして、私の持分1/10を兄に「相続分の贈与」を登記原因として移転登記をしました。すると、県税事務所の担当者から、これは贈与になるので不動産取得税がかかると言ってきました。そうなんでしょうか?
A 県税事務所の考えは間違っていると思います。
1不動産取得税の法的性格
不動産取得税は、不動産の取得に課される税金ですが、これは各種の経済取引にかかる流通税の1つとされています(金子宏著租税法第17版:弘文堂659ページ)。ですから、経済取引には該当しない相続による不動産の取得は非課税とされません(地方税法73条の7第1号)。
なお、広島高岡山支判昭59.7.26は、相続による不動産の取得が非課税とされるのは、相続が被相続人の法律上の地位を当然に承継したものであるから、実質的には権利の主体に変更がないという理由です。
2相続による不動産の取得の範囲
相続による不動産の取得は、遺言による遺産分割方法の指定や遺産分割による取得という直接的な取得だけでなく、いったん成立した遺産分割協議によって取得した不動産を、その遺産分割協議を合意解除して改めて遺産分割協議をし直した結果に従って、他の相続人に移転した場合も、相続による不動産の取得に該当しますので不動産取得税は課されません(最判昭62.1.22)。
3相続分の譲渡
相続分の譲渡は、まだ遺産分割をする前の段階でするものです。実体的な権利の移転とも言えません。また、相続人から他の相続人への相続分の譲渡は、贈与税の対象にもならないのですから(昨日のコラム参照)、この場合は、不動産取得税の対象になるものとは考えられません。ただ、裁判例はないようです。
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