遺言執行者④ 相続財産目録調整義務続き➁
Q1 内縁の夫が「財産はすべて、内縁の妻のA子に相続させる。」という遺言を残して、亡くなりました。
A子とは私のことです。
遺言書は私が預かっています。
内縁の夫には、妻子はいなく、両親も亡くなっており、1人っ子でしたので、兄弟姉妹もいません。
要するに相続人はいないのです。
このような場合、私はどうすればよいのですか?
A 遺言書が私製証書でできているのでしたら、
①それを所持している人(あなたの場合はあなた)が、家庭裁判所に検認の申立をし、
②その後で、遺言執行者の選任の申立をして遺言執行者を選任してもらい、
③遺言執行者の手から、全財産の引渡や登記・登録等の名義の書き換えの手続をとってもらえば、財産はすべてあなたのものになります。
遺言書が、公正証書でできている場合は、①の手続は不要です。
また、遺言書で遺言執行者が指定されているときは、②の手続も不要です。
Q2 内縁の夫には相続人はいないのですから、民法952条により相続財産管理人の選任を申立てる必要があるのでは?
A いいえ。
民法951条は「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」民法952条1項は「前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。」と規定していますが、これは、被相続人が残した財産の取得者がいない場合の相続財産の精算のための制度ですので、被相続人が財産全部の包括遺贈をしている場合は、財産は全部、包括受遺者(あなたのケースではあなた)に帰属していますので、相続財産管理人の選任の必要はありません(最判平9.9.12)。