大切にしたいもの 善言
1 不倫から赦しまで
これは、A子の話、です。
A子は、夫の不倫という厄に遭い、以後、夫を見る目に疑心が宿ります。その疑心は暗鬼を呼び、暗鬼はA子と夫と子らまでを巻き込み、修羅の世界を造りだしましたが、A子は、恩師と仰ぐ人より、“赦し”の大切さを教えられ、夫を許すことにしました。
後日の、A子の述懐です。
A子は、夫を許すと言った瞬間に、自分自身が疑心と暗鬼から救われ、自分自身の魂が許されたことを知った、と言ったものです。
2 では、疑心と暗鬼は?
これもA子の述懐です。
A子の疑心に暗鬼を呼んだ理由の1つに、善意の知人の善意の助言があった、ようです。
善意の知人は、A子を心配する余り、A子の夫に関する情報を集め、A子にこれらの情報を伝え、また種々親切な注意をしてくれたそうです。A子は、その都度、夫の過去・現在の行動を知っていきました。知人の注意も、特別の意味があるものと思い、心の襞に刻んでいったようでした。
夫の、この過去と現在の行動は、冷静にこれを観察すれば、誰にでもある日常の一コマ一コマでしかないものでしたが、A子は、善意の知人の、わざわざの情報提供に、また、親切な注意に、意味を感じ、A子の疑心に暗鬼が宿ることになったようでした。
しかし、A子が、夫を許すと言った瞬間、疑心が呼んだ暗鬼は、実在しない幻であったことが分かったとのことでした。
3 “信じる”という意味
A子に、夫を信じているのか?と、ある人が尋ねたとき、A子は、夫を信じている、と答えました。
続いて、その者が、A子に、夫を信じるとは夫が二度と不倫をしないことを信じる、ということか?と訊きますと、A子は、微笑を含んだ、柔和な視線を、質問をした者に向けながら、すべてです、と答えたとのことです。
A子の言葉を聞いた人の印象として、A子の“信じている”という言葉には、愛情あるれる、明るい響きがあったようでした。
その後、A子は、傍目ににも分かるくらい、明るい生活を取り戻しました。“信じる”ことの効果なのでしょう。