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間違えやすい法令用語 35 誤解の多い、時効中断事由としての「催告」

2012年3月19日 公開 / 2012年8月17日更新

テーマ:法令用語

コラムカテゴリ:法律関連

1 時効中断事由
民法147条は、
「時効は、次に掲げる事由によって中断する。
 一 請求
 二 差押え、仮差押え又は仮処分
 三 承認 」
と規定しています。

2 請求の意味
民法147条の「請求」すなわち時効中断事由としての「請求」は、裁判上の請求をいいます。
その具体的な内容として、民法149条に「訴え」、150条に「支払督促」、151条に「和解及び調停の申立て」152条に「破産手続参加等」についての規定が置かれています。

3 催告の意味
催告とは、裁判外の請求のことをいいます。
ですから、催告は、民法147条の「請求」ではありません。
ですから、「催告」は時効中断事由ではありません。

4 催告の効果
 催告は、それ自体、時効中断事由ではありませんが、時効期間を最大6ヶ月間延長できる効果があります。
すなわち、民法153条は、「催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。」と規定しているのです。


5 実務上多い誤解
 「毎月1回、請求書を送っているのだから、我が社の債権は、消滅時効にはかからないのでしょう。」という質問は、しばしば受ける質問ですが、これは誤解です。
 催告は、1回に限り、時効期間を最大で6ヶ月間延長できる効果しかないのです。

6 説例
 甲は乙に対し、消滅時効期間が2年間の債権を有し、その弁済日は平成22年1月31日という、ケースで考えてみます。
 時効期間は、その債権の弁済日の翌日に開始しますので、甲の乙に対する債権は、平成22年2月1から平成24年1月31日までの間に、弁済を受けないと、1月31日の経過によって、時効で消滅してしまいます。
 そこで、甲は、催告の効果の誤解から、催告に時効中断の効果があると思って、乙に対し、平成22年2月から毎月欠かさず、その月の末日までには乙に配達されるように、請求書を送り続けたとします。
そして、平成24年1月に郵送した請求書は、平成24年1月25日に配達されたとします。
同年2月も25日に、同年3月は19日に配達されたとします。

7 質問
 説例を前提とした場合、甲の乙に対する債権は、本日現在すなわち平成24年3月19日現在、時効で消滅しているでしょうか?まだ時効で消滅していないとすれば、いつ時効で消滅するのでしょうか?

8 回答
  甲の乙に対する債権は、平成22年1月31日が弁済日なので、催告をしていなければ、その日から2年後の平成24年1月31日が経過した日に時効で消滅していることになりますが、説例では、この間すなわち平成22年2月から平成24年3月までの間、甲は乙に対し毎月1回請求書を送って催告をし続けておりますので、これら26通の請求書の内、本来の時効期間の中で最も遅く配達された請求書、すなわち、平成24年1月25日に配達された1通のみが、その翌日から6ヶ月が経過するまで、甲の乙に対する債権の時効期間が延長されるという効果を生じさせています。
しかし、この場合でも、その日から6ヶ月目の平成24年7月25日までに、甲が乙に対し訴訟を起こすなどをしない限り、その債権はその日が経過すると時効で消滅してしまうことになります。

なお、催告は、到達日時が簡単に証明できる内容証明郵便ですべきです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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