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賃借人が賃借建物内で死亡していたとき

菊池捷男

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テーマ:不動産法(賃貸借編)

①原状回復費用がかかる場合の賃借人の責任範囲

東京地判昭和58年6月27日は、賃借人が建物内で腐乱死体となって発見され、死体から建物の床面に流出した悪臭に満ちた汚物・体液が床コンクリートまで浸み込み、これによって屍臭が室内の天井・畳・建具その他に浸透すると同時に、同室に隣接する建物部分にまで悪臭がただよったという事案ですが、
この裁判例では、建物部分の汚損(悪臭を含む。)を修復するためには、単なる清掃だけでは足りず、天井板、壁板、床板、ふすま等を取り替える必要があるし、浴槽、便器等の住宅機器等も次の借主に対して嫌悪感を与えないために交換する必要があるとの判断に基づいてされた修理工事費用を賠償すべきであると判示しました。この裁判例は、賃貸人が、賃借人の相続人及び保証人に対し、建物内の天井板・壁板・床板等を交換するのに要する費用を賠償するよう請求することができるとしたのです。
なお、同裁判例は、賃借人の原状回復義務の範囲は当該賃借物に限られ、それ以外の部分には及ばないとして、賃借人の相続人及び保証人は、隣室について生じた損害までは賠償する責任を負わないと判示されています。

②上記のような事故があったときの、賃貸人や賃貸借の仲介業者の、次の賃借希望者への告知義務の期間
財団法人日本賃貸住宅管理部会が発行する「最近の相談事例に学ぶ賃貸住宅管理のあり方」では、宅建業者による告知の期間は、自殺の場合と同様の6年程度が望ましいとされています。したがって、法律上の定めはありませんが、6年を1つの目安として考え、その間は、次に賃借を希望する人に告知する義務があり、6年を経過すると黙っていても良いでしょう。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

迅速(相談要請があれば原則その日の内に相談可能)、的確、丁寧(法律相談の回答は、文献や裁判例の裏付けを添付)に、相談者の立場でアドバイス

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